監督:ガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミール
出演:アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミール、ジェイミー・レイ・ニューマン
ジョージアの首都トビリシで開かれている女子柔道選手権に参加しているイラン代表選手ライラ。このまま勝ち抜くとイスラエル代表選手と当たる可能性があるため、負傷を装って棄権しろ、との命令をイラン政府から受ける。テヘランにいる両親が政府に拘束されていることを知るが、レイラは出場を諦めない。コーチのマルヤムは命令に従うよう説得するが、レイラの決意は固い。やがて、マルヤムは、自身もかつてソウルで、負傷したと嘘をついて棄権せざるを得なかったことを明かす。レイラと共にスカーフを脱ぎ、自由のために闘う決意をする・・・
『聖地には蜘蛛が巣を張る』(22)でカンヌ映画祭女優賞を受賞したイラン出身のザル・アミール。本作で、コーチのマルヤム役としてキャスティングされた後、共同監督も務めることになりました。東京国際映画祭で最優秀女優賞受賞。

東京国際映画祭 審査員特別賞&最優秀女優賞 W受賞『タタミ』 (咲)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/501717571.html
クロージングセレモニーでの発言や、10/29 13:20からの上映後 Q&A @丸の内TOEIの詳細も掲載しています。
圧力のある中で、自由と権利を求める物語。確かに力強く、メッセージも明確なのですが、東京国際映画祭で受賞した折、政治的見地から賞をおくった感が否めませんでした。
レイラが夫とのベッドの中での会話や熱いキスを回想したり、試合前に体重を測る場面で服を脱いで肌を見せたりの場面は、イランではもちろんご法度。こういう表現をしなくても描けるのに、それを敢えて入れたような気がしました。
なお、テヘランで、家族や友人たちが集まって、テレビで中継を観戦している場面で、女性たちが髪の毛を出しているのは、もちろんイランで普通のことなのですが、イランの映画では検閲に引っ掛かります。また、レイラが夫と地下にあるクラブに行って踊る場面があるのですが、これも女性がソロで歌っていて、イランでは御法度です。
イスラエルにルーツを持つガイ・ナッティヴ監督と、フランスに亡命したイラン女性ザーラ・アミールが共同監督して出来上がった映画、体制批判があからさまで、複雑な思いがよぎっています。(咲)
「スポーツと政治」の問題を鋭く深く問うスポーツエンターテインメント。スポーツ界への政治介入や中東の複雑な情勢、イランにおける女性への抑圧状況も垣間見え、それを背景に、レイラたちアスリートの不屈の「戦い」が描かれる。レイラは政府に服従するか、自由と尊厳のために戦い続けるか、人生最大の決断を迫られるが、臨場感溢れる映像が描かれるが、オープニングからラストまでスリリングな展開が続く。2019年の日本武道館での世界柔道選手権で実際に起こった事件をベースに映画化したという。
監督は「システムや政府間の対立によって夢を諦めざるを得なかったり、祖国や愛する人の元を去らなければならなかったアスリートたち。人々の思いやりや協力が勝利するのだということを世界に示す映画を作ることができたと信じている。憎しみや相互破壊の狂乱を超えて、未来を共に築こうとするすべての人々への尊敬を込めた」と語っている(暁)。
2023年/アメリカ、ジョージア/英語、ペルシア語/103分/モノクロ/1.78:1/5.1CH
配給:ミモザフィルムズ
公式サイト:https://mimosafilms.com/tatami/
★2025年2月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開