2025年02月02日

ハイパーボリア人  原題:Los Hiperbóreos

Hyperboreans.jpg
© Leon & Cociña Films, Globo Rojo Films

監督:クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ
脚本:クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ、アレハンドラ・モファット
出演:アントーニア・ギーセン

女優で臨床心理学者でもあるアントーニア(アント)・ギーセンは、謎の幻聴に悩まされるゲーム好きの患者の訪問を受ける。彼の話を 友人の映画監督レオン&コシーニャにすると、2人はその幻聴は実在したチリの外交官にして詩人、そしてヒトラーの信奉者でもあったミ ゲル・セラーノの言葉であることに気づき、これを元にアントの主演映画を撮ろうと提案する。2人に言われるがまま、セラーノの人生を振り 返る映画の撮影を始めるアントだったが、いつしか謎の階層に迷い込み、チリの政治家ハイメ・グスマンから、国を揺るがすほどの脅威が記録された映画フィルムを探す指令を受ける。カギとなる名前は”メタルヘッド”。探索を始めるアントだったが、やがて絶対の危機が彼女を 待ち受ける……!

制作に5年を費やした『オオカミの家』の反動で、突如、実写映画に挑んだチリのアーティスト・デュオ、レオン&コシーニャの長編第2作。第77回カンヌ国際映画祭監督週間でお披露目されました。

タイトルの「ハイパーボリア人」とはギリシア神話や H.P.ラヴクラフトらの創作による「クトゥルフ神話」に登場する架空の民族。この映画では、太古の昔に宇宙からやってきて地球を支配していた半神の巨人たちと説明され、チリという国との驚くべき関係も明らかにされる。

実写、影絵、アニメ、人形、ゲーム、16mmフィルム…… 美術館で人々に制作プロセスを見せながら撮影するスタイルで、摩訶不思議な映像が次々に出てきて、くらくら。
アーリア人の神話では、太古の昔、氷河期が来る前の南極に楽園があって、ハイパーボリア人という薔薇色の白人がいたのだそう。ファンタジーのような話が出てくる前には、ヒトラーを信奉していた伯父の話が出てきて、さらにそれがチリの現代史にまでおよびます。つらい時代だったことを、声高に語るわけではないのですが、つい先日も『私の想う国』を観て、チリの軍事政権時代が人々に暗い影を落としたことを思い起こさせてくれたばかりで、本作にもチリの人たちの思いを感じてしまいました。
それにていも、不思議な映像世界! (咲)


世界4大アニメーションフェスティバルである第48回オタワ国際アニメーション映画祭に出品された短編『名前のノート』も同時上映されます。

◆短編『名前のノート』
ピノチェト軍事政権下で行方不明になった未成年者たちを追悼する重厚な「描き」アニメーション。映像、音響(合唱)ともに、こちらも若者たちとのワークショップによって生み出された。


2024 年 / チリ / スペイン語・ドイツ語 / 71 分 / カラー / 1.85:1 / 5.1ch
字幕翻訳:草刈かおり
公式サイト:https://www.zaziefilms.com/loshiperboreos/
★2025年2月8日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー




posted by sakiko at 18:53| Comment(0) | チリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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