監督・脚本・編集:長屋和彰
プロデューサー・助監督・スチール:大沢真一郎
撮影・照明・編集協力:磯辺康広
出演:長屋和彰(倉木護)、黒住尚生(倉木幹)、菊池豪(稲田勝也)、山本由貴(霞亜希)、ふくだみゆき(稲田弥枝)、篠原篤(石森)、大沢真一郎(枝)
長男の護は、亡き父の[金継ぎ師]の後を継いだ。父とは違うやり方で顧客の求めに応じている。独り身の護は、仕事が終わると友人の稲田の店で一杯飲んで帰る。親が亡くなっても年末に家族そろって大掃除をする習慣は変えていない。ふだん連絡もよこさない弟の幹だが、ちゃんと帰ってきた。護は仕事に戻り、掃除を始めた幹は、父の部屋が空になっているのに気づいて護にくってかかる。取っ組み合いのあげく怒りの収まらない幹はどこかへ出て行ってしまった。
定位置にあるカメラが、護の朝のルーティンを映しています。一人での食事でも「いただきます」と言い、部屋もよく片付いています。几帳面で真面目な性格が見えます。護は急に来店した女性の茶碗をいったんは断わりますが、理由を聞いて修復することにします。幹も帰宅したらまっすぐに仏壇に向かい、手を合わせます。いろいろな説明は省略されているのですが、観客が想像できるヒントがそこかしこにありました。
金継ぎの作業を初めてよく見ました。護が父の言葉「なかったことにしないで綺麗に修繕した跡を残す。そこが金継ぎのいいところ」と言うのをほおぉと深く納得して聞きました。金継ぎは金繕いともいいます。護は言葉をじっくり選んで話しますが、幹は短気で、お終いまで話を聞きません。護と幹の共通の友人たちが登場して、この二人の潤滑油となります。稲田夫妻のやりとりはこの静かな作品のハイライトでした。主役より目立った稲田夫人は『カメラを止めるな!』の上田監督の奥様ふくだみゆきさん。監督デビューはなさっていますが、女優として初出演です。監督・主演の長屋和彰さん、プロデューサー・助監督・出演の大沢真一郎さんもカメ止めに出演していましたよ。
日本の伝統文化の金継ぎの仕事にフォーカスしながら、不器用な兄弟や周りの人々が繕いあいながら生きていく様が描かれています。(白)
2023年/日本/カラー/89分
(C)2023 Mending Cracks
https://yellow315327.studio.site/
★2025年1月11日(土)新宿K's cinemaにて公開中
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