2024年12月22日

子どもたちはもう遊ばない 原題:Here Children Do Not Play Together  ★「ヴィジョン・オブ・マフマルバフ」

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(C)Makhmalbaf Film House

監督:モフセン・マフマルバフ(『カンダハール』『パンと植木鉢』他)
撮影:シャディ・ジャミル・ハビブ・アラー、モフセン・マフマルバフ
編集:マルズィエ・メシュキニ
音響:ハナ・マフマルバフ
プロデューサー:メイ サム・マフマルバフ
製作:マフマルバフ・フィルム・ハウス
出演: アリ・ジャデ、ベンジャミン・フライデンバーグ、アディ・ニッセンバウム、エルサレムの市民たち

2023 年 恐怖と憎悪が極限化するパレスチナとイスラエル
分断の象徴であるエルサレムの深層へと潜ってゆく
旧市街の日常から見えてくる紛争の根源とかすかな希望


映画のロケハンでエルサレムを訪れたマフマルバフ監督。ユダヤ、キリスト教、イスラームの3つの宗教の聖地である歴史ある町を彷徨いながら、出会ったパレスチナ人やユダヤ人の語る姿をスマートフォンに収めていく。 ロシアから移民してきたユダヤ女性は、教育システムがそれぞれの宗教ごとになっているために分断されていると語る。数少ない異教徒が一緒に学ぶ学校にも足を運ぶ。そこの卒業生は友人に銃を向けたくないと兵役に就きたくないという。
2023 年 10 月のハマス襲撃後、イスラエルの激しい報復が続く。長年続くイスラエルとパレスチナの紛争に解決の糸口はあるのか・・・

アフリカ系パレスチナ人と名乗るアリ。先祖がアフリカからメッカ巡礼に来て、パレスチナ女性と結婚したのだとか。18歳の時、政治犯として逮捕され15年間収監。その後、ジャーナリストとして真実を伝えたいと活動していたけれど、アラファトが議長になって辞め、今は、世界からくる観光客にエルサレムの町を政治的意識を持って観光してほしいと自主的にいガイドを務めています。強烈なキャラクター。マフマルバフ監督は、このアリさんと偶然出会ったそうで、まさに「神様からの贈りもの」。
ユダヤ人のベンジャミンさんは、先祖代々この地で暮らしてきた家系で、イスラエル建国前にパレスチナ人と交流してきたお祖父さんやおじさんの話を聞いて育った方。本人もパレスチナ人と交流しています。まわりのユダヤ人は、「殺される」「理解してくれない」とパレスチナ人に会おうとしないと語っていて、偏った情報のためだと悲しくなります。
「パレスチナ人」と書かれたTシャツを着た10代の少年少女が、軽快な「Dammi Falastini(My Blood is Palestinian/私の血はパレスチナ人)」という曲に合わせて踊る姿は明るくて、パレスチナの子どもたちのインティファーダで石を投げるイメージとは違うものでした。この曲を歌っているムハンマド・アッサーフは、閉じ込められたガザの町から、「アラブ・アイドル」に出演して注目され、アラブ圏のスターになった人。(映画『歌声にのった少年』に描かれた人物) 
アリやベンジャミンなどの人たちの話の合間合間に、この子どもたちのダンスシーンが挟み込まれて、映画に独特のリズム感をもたらしていて、今も曲が頭の中でぐるぐる回っています。明るく振舞っているこの少年少女たちに、真に明るい社会がもたらされますようにと祈るばかりです。
公開を機に、9年ぶりに来日したマフマルバフ監督にお話をお伺いしました。

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モフセン・マフマルバフ監督インタビュー 
この映画の中には、パレスチナの詩人マフムード・ダルヴィーシュの「他者を思え」という内容の詩が出てくるのですが、それ以外にも、マフマルバフ監督自身の語る言葉がとても詩的な香りに溢れています。
「詩と共に生きる私たちイラン人は、2+2は4じゃないと思っています。国民的に論理的じゃないのです」という言葉が一番印象に残りました。(咲)




2024 プサン国際映画祭 正式出品
2024 サンパウロ国際映画祭 正式出品

2024/イギリス、イスラエル、イラン/62 分/カラー/DCP/英語、アラビア語、ヘブライ語
配給:ノンデライコ
企画:スモールトーク
公式サイト:http://vision-of-makhmalbaf.com/
★2024年12月28日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて
posted by sakiko at 21:27| Comment(0) | イラン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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