2024年12月22日

夏が来て、冬が往く  原題:夏來冬往 英題:Hope for A New Life

『夏が来て、冬が往く』ポスタービジュアル_R_R.jpg
©MICRO ENTERTAINMENT TIMES FILM CO. LTD.


2024年12月27日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
劇場情報

夏が来て冬が来る。冬が去るとやがてまた夏が来る
親が子を育て、暮らしを営む。
その子が新たに生まれた子を育て、世代が移っていく。
それはまるで四季のよう


彭偉(ポン・ウェイ)監督、
撮影:孟德静(モン・ダージン)
美術:谢首洁(シェ・ショウジェ)
編集:李德华(リー・ダーホア)
制作:牧義寛
音楽:西村大介、黒田征一
効果・整音:丹雄二
CG:石川浩作
編集:宮澤誠一、飯田一史

出演
三女 林佳妮(リン・チアニー)役:雪雯 シュエ・ウェン
長女 鄭文鳳(チョン・ウェンフォン)役:曽韵蓁 ゼン・ユンジェン
次女 張曉莉(チャン・シャオリー)役:陈昊明 チェン・ハオミン
生母 藩三喜(パン・サンシー)役:王亜軍 ワン・ヤージュン
チアニーの養父 林小宝(リン・シャオバオ)役:楊涵斌ヤン・ハンビン 
チアニーの恋人 姚志遠(ヤオ・ジーユェン)役:孫序博 スン・シューボー
長男(弟)鄭文龍(チョン・ウェンロン)役:王馳 ワン・チー

中国の美しい海辺の町が舞台。家の都合で養子に出された三女佳妮(チアニー)。深圳(シンセン)に住む佳妮だが、実父が死去と連絡があり自分が養子だったと知る。葬式に出席のため、生家がある青島(チンタオ)に向かった佳妮だが、佳妮には二人の姉と長男である弟がいることわかった。しかも弟はとても自分に対して排他的。実家に入れず、家族でないから出ていけという。自分を手放した母にも納得がいかない。そんな佳妮が青島で過ごした3日間の心の軌跡と家族愛を描いた物語。家父長制による男尊女卑の考え。一人っ子政策のもと、女の子は養子に出されてしまった。この地方に伝わるという伝統文化や、女性であるための理不尽な扱い、男女差別の実態が浮かび上がる。家とは、家族とは、男女のあり方とは?を問いかける。中国の新鋭、彭偉(ポン・ウェイ)監督の長編デビュー作。

深圳の貿易会社で働く林佳妮(リン・チアニー)は、恋人姚志遠(ヤオ・ジーユェン)からプロポーズされたが結婚に踏み切れずにいた。理由は、自分たちの持ち家がないこと。中国では昔からそう言われてきて、家がなければ結婚できないと考えていた佳妮は、価値観の違う恋人からのプロポーズに応えられずにいた。
そんな時、生き別れになっていた実父が亡くなったとの知らせを受け、葬儀に参列するため生家を訪ねた佳妮は、自分には他に2人の姉と弟がいて、長女と長男は実家、次女と自分が養女に出されていたことを知った。海を望む青島近くののどかな村で家族の温もりを味わいながら、母や姉たちのこれまでの暮らしと、さまざまな思いを知っていく。しかし、母が佳妮たちを捜した裏には別の理由があったことを知り愕然とする。
結婚しない選択をする女性が増え、少子高齢化をたどっている中国。失業率の上昇などの将来への不安の他に、1980年頃から導入された「一人っ子政策」(2015年に撤廃された)で女性より男性の数が多いという背景もある。男尊女卑の考え方が根強い地方では女児の誕生は歓迎されず、養女に出されるケースも多かった。
長編映画が初となる彭偉(ポン・ウェイ)監督は、これまであまり取り上げられることのなかった、このような中国社会のひずみにスポットを当てた。中国で実際にあった家族のエピソード数件を盛り込み、多くの女性たちが経験しているのに、あまり表に出てこなかった心の傷に寄り添う。中国で映像制作の仕事に従事し、日本大学芸術学部映画学科で学んだ経歴を持つ彭監督。この作品は、撮影や脚本制作は中国で、仕上げ作業は日本で行い、中日共同作品として完成された。

監督 彭 偉(ポン・ウェイ)フィルモグラフィ 公式HPより
1984年7月19日生まれ、中国 黒竜江省出身。
(黒竜江省は、中国最大の食糧産地、平原は景色が美しく、
ロシアに隣接しており、最低温度は零下50度を記録したことがある。
日本大学芸術学部映画学科卒。中国にて映像制作に携わる。
06年、短編映画『10元の偽札』が第7回北京大学映画祭に入選。
18年、短編映画『雪の味』が日本大学芸術学部湯川制賞を受賞。
22年に撮影した本作が長編初監督となる。
東京国際映画祭2023「東京・中国映画週間」新鋭監督賞受賞。

「中国では昔から家がなければ結婚できないと言われてきた」と、ここでは言っているけど、そうだったの?と思った。私がこれまで300本以上観て来た中国映画ではそういう話は出てきたことがなかったように思う。社会主義になった中国では、ほとんど職場と結びついた社宅のような住宅が多かったし、「結婚するには持ち家が必要」という価値観に出会ってこなかった。古い田舎町ならともかく、深圳という近代的な街に住んでいて、そういう考え方がある?と、佳妮の価値観に疑問が残った。それとも、少し豊かになった現代中国で、そういう価値観が出てきているのか。
また、生家があるという青島での、あまりに理不尽な男尊女卑の考え方にも疑問が残った。こちらも、海外からの交流もある現代的な街だし、いくら山の上にある村とはいえ、見下ろせば青島の町や港が見渡せるような場所で、こんなことってあり?と思った。社会主義になり「男と女が天下を支える」と、女性の地位も上がり、共産党の女性幹部や政府高官、職場の女性幹部もいる中国。そうはいっても、地方の田舎町や農村では、昔からの男女差別、家父長制は、今でも残っているとは思うけど、こんなに都会に近い場所でも、家父長制、家制度、男尊女卑が残っているのだろうか。場所の設定が違うのではないかという思いが残った。どこまでも男が大事、家が大事。中国の女たちも耐えてきたんだということが描かれる(暁)。


公式サイト https://natsugakite-fuyugayuku.com
(2023年/中国/カラー/98分/ビスタ/5.1ch)
日本語字幕:樋口裕子(日本シネアーツ)
英語字幕:平田早苗 (スプラウト)
協力:日本大学芸術学部映画学科 北海道映画舎
配給:アークエンタテインメント
配給協力:クロスメディア
posted by akemi at 20:07| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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