(C)R.T.I. S.p.A.–Rome, Italy, Licensed by Variety Distribution S.r.l–Rome, Italy, All Rights reserved.
監督:マイケル・ラドフォード
音楽:ルイス・エンリケス・バカロフ
原作:アントニオ・スカルメタ
出演:マッシモ・トロイージ、フィリップ・ノワレ、マリア・グラツィア・クチノッタ
イタリア、ナポリの沖合いに浮かぶ小さな緑溢れる島。貧しい漁師の父親と二人暮らしのマリオ(マッシモ・トロイージ)。漁師が好きじゃないマリオに、父は何か仕事を見つけろという。そんなある日、「郵便配達人募集。要自転車」の貼紙を見つけて応募し採用される。チリから亡命してきて島のはずれに滞在することになった高名な詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)に手紙を届ける専任の配達人の仕事だ。サインが欲しくて、彼の詩集を購入し、読んでみる。毎日、郵便物を届けて話すうちに、次第に詩人と心を通わせるようになる。自分も詩人になれたらと話すと、海に向かって歩いていくといいといわれる。そんなある日、マリオは港のバーで働くベアトリーチェ(マリア・グラツィア・クチノッタ)に一目惚れする。恋をしたと話すと、詩人は「ベアトリーチェに会いに行こう!」と、彼の恋を応援してくれる。パブロを立会人に二人の結婚式が行われている最中、チリ当局の逮捕命令が取り消されたとの手紙が届き、パブロは国に帰ることになる・・・
パブロ・ネルーダ
チリを代表する国民的な詩人であり、外交官、政治家。2024年はネルーダ生誕120周年にあたる。
ネルーダは、16歳でパブロ・ネルーダというペンネームで詩を書き始め、24年官能的な愛の詩集「二十の愛の詩とひとつの絶望の歌」を出版。
20代から外交官としてアジア各地を遍歴し、34年スペインに赴任、スペイン内戦を目の当たりにし共産主義に接近。45年にチリ共産党に入党するが、48年に議員資格をはく奪され、国外逃亡を余儀なくされる。このころのイタリア亡命時代を題材に『イル・ポスティーノ』が作られている。50年には詩集「大いなる歌」を刊行。
52年、逮捕令が解けてチリに帰国。70年には共産党から大統領候補に推されるが辞退し、チリは世界で初めて民主的な選挙によって社会主義政権が誕生。駐仏大使中の71年にノーベル文学賞を受賞するが、病気のため大使を辞任し72年にチリに帰国。
しかし翌73年9月11日、ピノチェト将軍率いる国軍クーデターが起こり、兵士らに家を破壊される。その12日後、危篤状態に陥り死亡。
死因は長い間病死とされてきたが、軍部による毒殺だったという疑惑があり、2013 年チリ司法当局は死因確認のため、遺体を掘り起こし調査したが、遺体から毒物は検出されなかったと発表した。(公式サイトより抜粋)
製作から30年、ロングラン大ヒットした名作が、ネルーダ生誕120周年記念で、4Kデジタル・リマスター版が公開されることになりました。
日本初公開は、1996年5月18日。当時観て、味わい深い作品に感動したものですが、その時には、詩人の故国チリの政情については疎くて、詩人が遠く離れたイタリアの島で暮らさなければならなかった事情のことなど何も考えなかったような気がします。
『チリの闘い』『光のノスタルジア』『真珠のボタン』などで、チリの辿った悲しい歴史を知った今、『イル・ポスティーノ』は違った意味で胸に迫りました。詩人の影響を受けたマリオは、イタリア共産党の集会に赴きます。それがまた「運命」を生むのです。
マリオを演じたマッシモ・トロイージが心臓病のためクランクアップ12時間後に41歳という若さでこの世を去ったことも、この度の公開を機に知りました。映画の余韻がいつまでも心に沁みます。(咲)
第68回アカデミー賞® 作曲賞(ドラマ)受賞!
1994年/イタリア・フランス/109分
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト:https://www.ilpostino4k.jp/
★2024年11月8日(金)より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA3週間限定公開