監督・撮影・編集:笠井千晶
出演:袴田巖、袴田秀子
30歳で放火・強盗殺人の容疑で逮捕され、裁判で死刑が確定し、獄中で47年7か月をおくった袴田巌さん。姉の秀子さんはこの間ずっと弟の無実を信じ、差し入れを持って面会に行き、手紙を書き、支え続けてきた。再審請求後、釈放された巌さんと秀子さんとの二人の暮らしをカメラは静かに映し出す。長い拘禁の後遺症で、記憶と妄想が混在している巌さん。日課にしている散歩で、かつて通ったボクシングジムのビルに一礼して手を合わせる。元プロボクサーは88歳になっていた。
=袴田事件=
1966年6月、静岡県清水市(現:静岡市清水区)の味噌製造会社会社役員の家が全焼し、一家4人が焼死体で発見された。4人はいずれも刃物で刺されており、容疑者として住み込み従業員の袴田巌さんが逮捕された。否定し続けたものの、長期間にわたって精神的・肉体的に過酷な取り調べを受け、拘留期日が迫ってきたころ「自白」する。裁判では一貫して無実を訴えたが、1968年静岡地裁で死刑判決、1980年最高裁で死刑判決が確定した。再審請求を続け、2014年に請求が認められて釈放。検察庁との長い攻防の末、2023年再審公判開始、2024年9月26日無罪判決が出された。
この10月8日検察が控訴を断念、無罪判決が確定しました。会見に登場した秀子さんは満面の笑顔、巌さんが「真の自由」を得たと喜びでいっぱいでした。明るい若草色の上着をこのときとばかり選んでこられたようです。この秀子さんのおおらかさ、強さに感嘆します。共に戦ってきた弁護団は検事総長の「談話」に苦言を呈しました。21日には静岡県警察本部長が袴田家を訪ね、巌さん秀子さんに「申し訳ありませんでした」と謝罪しています。事件の詳しい経緯や一連の動画は、袴田事件弁護団のHPで動画が観られます。
それにしても長い、長すぎる約58年。どう償われても時間は戻りません。1980年代には免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件という4件の死刑判決確定事件が、再審によって無罪となりました。冤罪から生還しましたが、再審を果たせず、失意のうちに亡くなった方もいます。いつも思うのですが、冤罪の陰にいるはずの真犯人はいったい?(白)
=関連作品=
●『ふたりの死刑囚』(2016年)監督:鎌田麗香
●『獄友』(2018年)監督:金聖雄(キム・ソンウン)
2024年/日本/カラー/159分
配給:太秦
(C)Rain field Production
https://hakamada-film.com/
★2024年10月18日(金)ほか全国ロードショー
【関連する記事】