2024年09月15日
ぼくが生きてる、ふたつの世界
監督:呉美保
原作:五十嵐大「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」
「ぼくが生きてる、ふたつの世界」と改題して7月に再販 (幻冬舎文庫 い 74-1)
脚本:港岳彦
撮影:田中創
出演:吉沢亮(五十嵐大)、忍足亜希子(五十嵐明子)、今井彰人(五十嵐陽介)、ユースケ・サンタマリア(河合幸彦)、烏丸せつこ(鈴木広子)、でんでん(鈴木康雄)
宮城県の小さな港町で暮らす、五十嵐家に男の子が誕生した。大と名付けられて優しい両親や祖父母に愛情いっぱいに育てられる。祖父母はきこえるが、両親は二人とも耳がきこえない。きこえる大は大好きな母の通訳をすることが喜びで「普通」のことだった。しかし、小学生になるとほかの子の母親と違うことがわかり、参観日のお知らせも見せないまま捨ててしまう。中学生から母と距離をとるようになり、高校進学のときに母に不満や怒りをぶつけてしまう。
無為な日々を過ごしながら20歳になり、父の後押しもあって上京する。バイト先のパチンコ屋でめっぽう明るいろう者のおばさん智子に出逢った。誘われた手話のサークルで「きこえない親の子どもをコーダ(*)と呼び、日本に2万数千人もいること」を知る。
*コーダ(CODA, Children of Deaf Adults)とは、きこえない・きこえにくい親をもつきこえる子どものことを指す
『そこのみにて光輝く』(2014)『きみはいい子』(2015)呉美保(お みぽ)監督9年ぶり長編監督作。出産と子育てのため、長編映画の制作から遠ざかっていましたが、プロデューサーからの声かけで復帰。呉監督が一貫して撮り続けている家族がテーマです。今回はろう者の両親とコーダの一人息子の28年間の物語。
きこえない人は外から見てわかりません。後ろから来た車がクラクションを鳴らしても気づきません。幼い大が車道側を歩く母をひっぱるシーンがあります。母親は息子を守って車道側にいるわけで、この守り守られが映画の進行と一緒に変化していきます。
両親はじめ、ろう者役はすべてろう者の俳優をキャスティング。これからも出番が増えるといいですね。主演の吉沢亮さんは手話を一から学びましたが、表現を抑えめにしてきたこれまでの演技と違い、伝わること第一の手話は身振りや表情を大きく動かします。一つひとつに意味があって戸惑ったそうです。住んでいる地域、家庭など立場によっても微妙に異なる手話を、演技と共にとてもナチュラルに表現していたと指導された方も絶賛。中学生から大人になるまでの成長ぶりにもどうぞご注目ください。
手話が登場するドラマや映画がヒットすると、しばらくの間関心が高まり学ぶ人が増えるようです。もう一つの日本語として「手話と点字」を学校や公共の施設などで学べたならもっと広まるのになぁ。(白)
2024年/日本/カラー/105分
配給:ギャガ
(C)五十嵐大/幻冬舎 (C)2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会
https://gaga.ne.jp/FutatsunoSekai/
★2024年9月20日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国順次ードショー
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