2024年09月12日
ヒューマン・ポジション 原題:A Human Position
監督・脚本・編集:アンダース・エンブレム
撮影:マイケル・マーク・ランハム 音楽:エイリク・スリニング
製作:スティアン・スキャルタッド、アンダース・エンブレム
出演:アマリエ・イプセン・ジェンセン、マリア・アグマロ、ラース・ハルヴォー・アンドレアセン
ノルウェー、フィヨルドに囲まれた港町オーレスン。パステルカラーのアールヌーボー建築の家並みが美しい静かな町。夏を迎え、今は白夜の季節。アスタは病気療養のため、しばらく地元新聞社の記者の仕事から離れていたが、臨時雇いながら復帰する。
アスタが一緒に暮らすのは、癒しをくれる小猫一匹と、自宅を職場に、古くなった椅子のリペアを手掛ける若い女性ライヴ。彼女との他愛のない会話は、病み上がりのアスタにとって、心安らぐものだ。
アスタは記者として、地元のホッケーチーム、アールヌーボー建築を保存するための小さなデモやクルーズ船の景気など地元の人々を取材する。
ある日、ライヴが新聞に掲載されていた『労働法違反で難民申請者が強制送還へ』という小さな記事に目を留める。気になったアスタは翌日、執筆した記者に連絡をとる。わかったのは強制送還された彼の名はアスラン、そして勤めていた水産加工工場の連絡先…。
ゆっくりと時が流れるノルウェーの静かな港町での物語。
そんなのどかな町にも、移民や難民の問題が潜んでいるのを、しっとりと教えてくれました。
アスタの心の支えになっているライヴも浅黒い肌ですが、彼女の出自については詳しく語られません。アスタが、ライヴに「ノルウェーの一番いい点は?」と問うと、「なんだろう、山?」と言いながら「不満を言う立場にない。批判を許されない」とつぶやきます。移民として認められたら、文句は言えないということでしょうか。
アスタはアスランのことを調べに市役所に行きますが、難民申請は移民局の担当と言われます。市は受け入れ後の定住支援。 移民局の受け入れセンターは、一人一部屋に冷蔵庫があって、共同スペースもとても綺麗。 アスランがどんな理由で強制送還されたのかは結局わからないのですが、受け入れられれば、それなりの快適な暮らしができるのが見て取れました。
興味深かったのは、監督の日本趣味。アスタが柔道着、ライヴが浴衣を着て、湯飲み茶碗でお茶を飲みながら囲碁をする場面がありました。テレビからは、♪スミレの花咲く頃~♪と宝塚の曲が流れていて、映画『お茶漬の味』(1952)とのこと。
アスタとライヴがくつろぐ部屋の隅では、黒猫が一生懸命エサを食べていて、あ~ここには猫の居場所もしっかりあるなぁ~と、しみじみ。(咲)
2022年/ノルウェー/ノルウェー語/カラー/ヴィスタ/78分
日本語字幕:西村美須寿
提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション 配給:クレプスキュール フィルム
公式サイト:https://position.crepuscule-films.com/
★2024年9月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
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