2024年05月26日
天安門、恋人たち 原題:頤和園 英題:Summer Palace
監督:ロウ・イエ(婁燁)
脚本:ロウ・イエ、メイ・フェン(梅峰)、マー・インリー(馬英力)
音楽:ペイマン・ヤズダニアン
出演:ハオ・レイ(郝蕾)、グオ・シャオドン(郭暁冬)、フー・リン(胡伶)、チャン・シャンミン(張献民)、ツイ・リン(崔林)、ツアン・メイホイツ(曾美慧孜)、パイ・シューヨン(白雪雲)
1987年、中国。北朝鮮との国境近くの図們(ともん)で暮らす少女ユー・ホン(余紅)のもとに北京の北清大学から合格通知が届く。届けた郵便配達のシャオ・ジュン(暁軍)は彼女の恋人だ。ユー・ホンは恋人や父親に別れを告げ、大学生活を始める。女子寮で親しくなったリー・ティ(李緹)の恋人ロー・グー(若古)が留学中のベルリンから一時帰国して、ロー・グーの友人チョウ・ウェイ(周偉)を紹介される。瞬く間に恋に落ちる二人。狂おしく求めあいながらも、激しくぶつかり合う日々。大学では、自由と民主化を求める声が高まっていたが、ついに1989年6月4日、天安門広場で学生たちが軍に弾圧される。世にいう天安門事件。故郷からシャオ・ジュンが迎えに来て、ユー・ホンは大学を中退して一旦は図們に帰るが、その後、深圳(しんせん)、武漢(ぶかん)といくつもの街を漂流する。チョウ・ウェイへの思いを抱えながら、出会う男たちと関係を持つ。
一方、チョウ・ウェイは、ロー・グーの助けを得て、リー・ティと共にベルリンに赴く。数年後、チョウ・ウェイは中国に帰り、人づてにユー・ホンが結婚したことを知る。連絡を取り、ついに再会を果たすが・・・
公開当時に観ているのですが、覚えていたのは天安門事件の日、逃げ惑う若者たちの姿だけでした。『天安門、恋人たち』という邦題と共に記憶に残ったのが、天安門事件の夜だったのだと思います。実は、本作の原題は、『頤和園』。学生たちのデートの場としての格好の場所。憂いある美女ユー・ホンも、美男子のチョウ・ウェイも、それぞれに誘惑が多そう。「天安門」から受ける政治的なものよりも、青春時代のほろ苦く切ない思い出を描いた映画と感じました。確かに、二人は天安門事件を機に離れ離れになるのですが、本作には、その後の1989年11月ベルリンの壁崩壊、1991年ソ連崩壊も、重要な時代背景として出てきます。
当時、中国で流行った曲が散りばめられているのですが、それについては詳しい(暁)さんにお任せするとして、私が気になったのは、全編を通して、感情の動きに呼応するように流れた音楽でした。観終わって、イランのペイマン・ヤズダニアンが音楽を担当したことを知り、やっぱりそうだったのか・・・と。
ロウ・イエ監督は、『スプリング・フィーバー』『二重生活』『パリ、ただよう花』でも、ペイマン・ヤズダニアンに音楽を依頼しています。『スプリング・フィーバー』公開時にロウ・イエ監督にインタビューした折に伺ったところ、映像を送ってそれに音楽を付けてもらうのではなく、あらすじを送って、そのイメージで作ってもらったものを映像に合わせるとのことでした。音楽で感情を揺さぶる手法は、ほんとは好きではないのですが、ペイマン・ヤズダニアンは、やっぱり上手いなぁ~と惚れ惚れ。
それにしても切ない物語でした。(咲)
★ぜひお読みください。
『天安門、恋人たち』「フィルムに込めた思いを未来に残すため」芦澤明子(日本映画撮影監督協会副理事長/撮影監督)
https://note.com/uplink_senden/n/n333b729907dd
2006年/中国・フランス/中国語/140分/35mm/カラー/5.1/1:1.85
日本語字幕:遠藤壽美子
配給・宣伝:アップリンク
公式サイト: https://www.uplink.co.jp/summerpalace/
★2024年5月31日(金)全国順次公開
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