監督:佐藤真
撮影:大津幸四郎、栗原朗、佐藤真
企画・製作:山上徹二郎
協力プロデューサー:ジャン・ユンカーマン
『阿賀に生きる』の佐藤真監督が、パレスチナの窮状の真実を探った旅。
パレスチナ出身の世界的知識人、故エドワード・サイードが永遠に失われたパレスチナでのサイード家の痕跡を描いた自伝「OUT OF PLACE」を指針に、イスラエル・アラブ双⽅の知識⼈たちの証⾔を道標にサイードが求め続けた和解と共⽣の地平を探る・・・
エドワード・サイード。1935年、キリスト教徒のパレスチナ人としてイギリス委任統治下のエルサレムで生まれた。父親がカイロでビジネス機器の会社を運営しており、カイロで育つ。15歳の時に、ナセルの国有化政策で、父親は会社を手放さなければならず、一家で渡米。プリンストン大学を経て、修士号と博士号をハーバード大学で取得。コロンビア大学で英文学と比較文学教授として40年勤める。
パレスチナ問題の代表的な論客として注目を集め、77年からパレスチナ民族評議会議員。93年のオスロ合意を前にアラファトと決裂。右傾化するアメリカ言論界において妨害・迫害にもかかわらず勇気ある発言を続ける。2003年9月25日、白血病に倒れる。享年67.遺骨は妻マリヤムの故郷レバノンのプルンマーナに葬られた。
映画は、レバノンのお墓を訪ねるところから始まりました。なぜかクエーカー教徒の墓地に、ひっそりと眠るエドワード・サイード。ニューヨークの家では、奥様が中東料理を作っていて、アメリカ生まれの娘マリアさんも「米国人だけど、ここに属していない感じ」と語ります。
1948年以降、帰ることのできなかった生家を佐藤真監督は訪ね当てます。確かに、父親の撮った8mmに映っている家。一方で、分離壁を作るために、ブルドーザーでさら地にされた住宅地も映し出します。
シリアのアレッポ出身のユダヤ女性からは、イスラエル建国の折、アレッポのユダヤ人街が焼き討ちにあった話が語られます。それまで、アラブもユダヤもアルメニア人も共存していたのにと。イスラエル建国で一変した中東の地。
アラブ人とユダヤ人が等しい権利を持つ新たな国を作るべきとの「一国家解決」論を主張していたエドワード・サイードが、さらに惨状を極める今の状態を知ったら、どれほど嘆くことでしょう・・・
本作を制作中の佐藤真監督のお話を聴いたことがありました。2005年4月に開催された「アラブ映画祭2005」でのことでした。(会場:赤坂・国際交流基金フォーラム) "完成間近”と題して、映画の前半部分の上映も行われました。
その後、2006年10月21日に上智大学で行われた上映会で完成作品も観ているのですが、その時には、「エドワード・サイードが裕福なパレスチナ人だったということはわかったのですが、実のところ、彼の思想について、あまり理解できませんでした」と、2006年10月第3週のスタッフ日記に書いていました。岡真理さんの解説で、多少理解できたとも。
今回、18年の時を経て、再度観て、さすがにこの間、イスラエルとパレスチナのことを散々学んできたので、よく理解することができました。
イスラエルがガザ侵攻を強行している今こそ観るべき映画だと感じます。(咲)
2005年/137分/カラー/DCP(4Kレストア)/スタンダード
配給:ALFAZBET、パラブラ
公式サイト:https://alfazbetmovie.com/satomakoto/
★2024年5月24日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次開催
◆『エドワード・サイード OUT OF PLACE』は、下記の特集上映の一環で上映されます。
17年前、49歳で突然この世を去った稀代のドキュメンタリー作家 佐藤真
アート、パレスチナ、記憶、様々なテーマを通じて佐藤が見つめた彼方とは――
映画史に燦然と輝く傑作の数々がレストアでいま蘇る
【上映作品】
<4K RESTORED>
・『まひるのほし 4K』
・『花子 4K』
・『エドワード・サイード OUT OF PLACE 4K』
<特別上映作品>
・『阿賀に生きる』
・『阿賀の記憶 2K』
・『SELF AND OTHERS 2K』
配給:ALFAZBET、パラブラ
公式サイト:https://alfazbetmovie.com/satomakoto
★2024年5月24日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次開催
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