2024年05月19日
ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~
監督・企画・編集:代島治彦
原案:樋田 毅「彼は早稲田で死んだ」文藝春秋刊
企画協力文藝春秋
出演:池上彰、佐藤優、内田樹、樋田毅 ほか
劇パート 脚本・演出:鴻上尚史
劇パート出演:望月歩(川口大三郎 役)、遠藤琴和(女闘士 役)ほか
学生運動終焉期に吹き荒れた“内ゲバ”の嵐。
革命を志した若者たちは、なぜ殺しあわなければならなかったのか?
1972年11月8日、早稲田大学文学部キャンパスでひとりの若者が殺された。第一文学部2年生の川口大三郎君。文学部自治会を牛耳り、早大支配を狙う新左翼党派・革マル派(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)による凄惨なリンチが死因だった。
川口君リンチ殺人事件に怒った早大全学の一般学生はすぐに立ちあがった。革マル派を追放し民主的な自治会を作り、自由なキャンパスを取り戻すべく「早大解放闘争」が始まった。しかし革マル派の「革命的暴力」の前に一般学生は敗れ去り、わずか一年でその闘争は収束する。皮肉にも川口君リンチ殺人事件を機に革マル派と中核派の「内ゲバ」は、社青同解放派(日本社会主義青年同盟解放派)をも巻き込みエスカレート。内ゲバの犠牲者は100人を超える。彼らは、なぜ死ななければならなかったのか・・・
私が大学に入学したのが、1971年4月。まさに川口大三郎さんと同世代です。1969年1月の東大安田講堂事件を経て、ようやく大学の授業が正常化。でも、入学式もまだ出来ない状況で、キャンパスには激しいスローガンを掲げた各党派の立て看板が林立。電車に乗り込む角棒を抱えたヘルメット姿の学生集団を見かけたこともありました。内ゲバで学生が亡くなったことが新聞の一面に大きく載ったのも覚えています。早稲田大学には、高校時代の憧れの君が通っていて、私の通う東京外国語大学からは都電1本で行けたので、時折、当てもなく早大のキャンパスに佇んだこともありました。外語大と同様、立て看の目立つ早稲田でしたが、「早大解放闘争」が行われていた気配を感じたことはありませんでした。
私が高校生の時には、学生運動が高校にも飛び火。3か月程、授業を拒否して、毎日討論の日々でした。私はまったくのノンポリで、後ろで読書していましたが、ベトナム戦争に反対してべ兵連にのめり込んだ同級生もいました。当時の学生の多くが、戦争反対、安保反対、そして授業料値上げ反対、学校の民主化などを求めて、闘争に身をやつしたものでした。今、パレスチナの人々のことを思って反戦デモやスタンディングする人たちの中には、50年前を経験した高齢の人たちも多いようです。 増税に次ぐ増税、そして戦争に加担しかねない今の政府に対して、闘争が起こってもいい状態なのに、物申そうという覇気のある人(特に若者)が少ないように思います。(私も傍観者ですが)
ちょっとした考えの違いで、内ゲバで殺しあうという残念な状況を起こした当時の学生たちですが、社会を変革したいという熱い思いは本物だったと思います。
この映画に登場する証言者の方たち(私と同年代の方たち!)の言葉から、内ゲバで亡くなられた川口大三郎さんが、過激な思想を持つ活動家ではなく、ごく普通に社会に意見する学生だったことを感じました。
映画の中のドラマ部分からは、集団心理が引き起こす悲劇を思いました。個々人の意見を尊重することの大切さを、この映画から学んでほしいと思います。(咲)
2024/日本/134分/日本語/カラー/DCP
配給:ノンデライコ
公式サイト:http://gewalt-no-mori.com/
★2024年5月25日(土). より ユーロスペースほか全国順次公開
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