(C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
監督・脚本:ジョナサン・グレイザー
原作:マーティン・エイミス
撮影監督:ウカシュ・ジャル 音楽:ミカ・レヴィ
出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー
アウシュビッツ強制収容所の隣で繰り広げられる所長宅の穏やかな日常
「The Zone of Interest(関心領域)」とは、第二次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランド・オシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を指した言葉。
(C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
1945年、アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスの広い邸宅。芝生の庭にはプールがあって、5人の子供たちがはしゃいでいる。妻のヘートヴィヒは、訪ねてきた年老いた母親に丹念に手入れした庭を案内している。裏庭のレンガ壁は、いずれツタで覆われて境界線は見えなくなるわという・・・
映画を観ている私たちは、アウシュビッツ収容所で何が行われていたかを知っていますが、自慢の庭を案内する所長夫人ヘートヴィヒも、夫が電話で話している言葉などから、時折聞こえてくる音や、煙突の煙が何かもちゃんと周知しているのです。
ヘートヴィヒが「かつて掃除をしていたユダヤ人宅の家財道具が競売された時、狙っていたレースのカーテンをほかの人に取られて悔しかった」と母に話す場面がありました。今は使用人もいる夢のような暮らし。夫からベルリン近郊への異動を伝えられた時、それは夫にとっては栄転なのに、自分はここに住み続けたいから単身赴任してちょうだいといいます。
ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ侵攻、世界を見渡せば各地で戦争が止まないことに心を痛めながら、好きなことをして日々暮らしている私も、思えば、この所長夫人と何も変わらない・・・と思い知りました。人間って、自分本位な生き物なのだと。
強制収容所で繰り広げられている惨い場面は映し出されないのですが、不穏な音で居心地の悪さを感じるのは、その身勝手さを突き付けられるからでしょうか・・・ (咲)
第76回カンヌ国際映画祭 グランプリ受賞
アカデミー賞 国際長編映画賞、音響賞の2部門受賞
2023年/アメリカ・イギリス・ポーランド/105分
字幕翻訳:松浦美奈
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/thezoneofinterest/
★2024年5月24日(金)より新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開