2024年05月12日
ありふれた教室 原題:Das Lehrerzimmer 英題:The Teachers’Lounge
監督・脚本:イルケル・チャタク
出演:レオニー・ベネシュ(『白いリボン』)、レオナード・ステットニッシュ、エヴァ・ロバウ、マイケル・クラマー、ラファエル・シュタホヴィアク
若き女性教師カーラ・ノヴァク。新たに赴任した中学で1年生を受け持ち、張り切る日々。学校では盗難事件が頻発していて、ある日、授業中に校長たちが抜き打ち検査を行う。大金を持っていたアリが疑われ、両親が学校に呼ばれるが、母親がいとこへのプレゼントを買う為に渡したものだと判明する。正義感溢れるカーラは、独自に犯人を捜そうと、職員休憩室でパソコンのカメラをオンにしておく。すると、特徴ある柄のブラウスから、ベテラン事務職員クーンがカーラのお金を盗んだらしいことが判明する。クーンは犯行を否定するが、休職させられる。成績優秀な息子のオスカーはカーラのクラスで、母は犯人じゃないと言い張る・・・
カーラは職員休憩室で、ある人物がコーヒー代を入れる箱から小銭を持ち去る姿を見て、カメラを仕掛けるのですが、その行為が人権侵害だと指摘されて、クーンを疑いながらも、画像を公開しません。教師の中には、「今の清掃会社になって盗みが増えた」という者もいます。盗難犯は、おそらく一人ではないはず。オスカーが母親の潔白を信じる姿が、あっぱれです。
移民の多いドイツを反映して、カーラのクラスにはスカーフをした女子生徒やトルコ系や色の黒い男の子もいます。カーラ自身、ドイツ生まれですが、両親はポーランドからの移民という設定。ポーランド系の同僚からポーランド語で話しかけられ、「ここではほかの人もいるからドイツ語で」と言っています。盗難を疑われたアリの両親が、トルコ語で会話した時には、「ここではドイツ語で」と促されます。
イルケル・チャタク監督は、トルコ移民の両親のもとドイツ・ベルリンで生まれ、12歳の時にイスタンブールへ。現地のドイツ系高校での同級生ヨハネス・ドゥンカーと共同で脚本を書いています。二人の学校時代、体育の時間に休んだ者が盗みを働いていたという思い出などが本作のきっかけ。
どこの国でもあり得る物語。ただ、ドイツでは、日本のような職員専用の机のある職員室はなくて、授業の合間の休憩時間に職員が過ごす場所があるとのこと。英語のタイトル『The Teachers’Lounge』が、そのイメージ。ところ変わればですね。
生徒たちが作る学校新聞には、「移民の背景を持つ生徒を証拠もなく疑った」と大きく掲載されます。移民排斥や人種差別があることも、映画の背景になっているようです。(咲)
*本年度アカデミー賞®国際長編映画賞ノミネート
*第73回ベルリン国際映画祭 W 受賞(C.I.C.A.E Award、Label Europa Cinemas)
2022年/ドイツ/ドイツ語、トルコ語、ポーランド語/99分/スタンダード/5.1ch
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:https://arifureta-kyositsu.com/
★2024年5月17日(金)、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋他全国公開
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