2024年04月28日

ドクちゃん ―フジとサクラにつなぐ愛― 

5月3日(金・祝)GWより新宿ピカデリー他、全国公開 公開劇場情報 

『ドクちゃん -フジとサクラにつなぐ愛-』ポスター画像_R_R.jpg
©2024 Kingyo Films Pte. Ltd. 

監督・編集:川畑 耕平
撮影:池田 俊己
音楽:原 摩利彦 
編集:レシア・ コルドーネッツ
プロデューサー:リントン貴絵ルース、吉岡フローレス亜衣子 
出演:グエン・ドク、グエン・トゥエン、グエン・フーシー(フジ)、グエン・アンダオ(サクラ)

生きつづける、未来のために

昨年の日越外交関係樹立50周年と分離手術から35周年を記念して製作された。ベトナム戦争時(~1975)アメリカ軍が使用した枯葉剤の影響で、下半身が繋がった結合双生児として1981年に生まれたベトちゃんとドクちゃん。
1986年、兄のベトが高熱に襲われ意識を失った。急性脳症だった。ベトへの大量の投薬は、ドクにも影響を及ぼし、2人とも命を失いかねない状況だった。そこでベトナム赤十字社は、日本赤十字社に緊急支援を求めた。日赤は最初、支援に慎重だったが、日本の世論が日赤を動かし、二人は来日して広尾の日赤医療センターに約4か月入院。
その後もベトの具合はすぐれず1988年7歳の時、日本の支援を受け、ベトナムのツーズー病院で分離手術が行われた。しかし、兄ベトは2007年、26歳で亡くなった。ドクも決して健康というわけではなく、深刻な健康問題を抱えたまま、平和のアンバサダーとしての使命と共に生きている。
コンピュータを勉強し、ツーズー病院に勤務。2006年、トゥエンさんと結婚し、2009年に男の子と女の子の双子が生まれ、支援してくれた日本に敬意を示し、息子にはフジ、娘にはサクラと名付けた。子供たちは13歳になった(2022)。移動には三輪バイクを使い、子供たちの送り迎えも行っている。
現在43歳になったグエン・ドクさんは、結婚18年目の妻トゥエンさんと、フジくん、サクラちゃんと共に、夫として父親として暮らす。さらに闘病中の義母も同居。自身も入退院を繰り返す中、一家の唯一の稼ぎ手でもある。今も逆境の中、逞しく生きるドクちゃんの姿、家族の絆を映画は映し出す。
教科書の中の人、過去の人になりつつあるドクちゃんが、ベトナムで家族とともに懸命に生きている姿を伝える。

枯葉剤の影響を扱った映像は日本でも数々伝えられてきたが、「ベトちゃんとドクちゃん」は、その中でも広く知られてきた。1986年の来日時かなり報道され、日本中に知れ渡った。その時から38年、分離手術からでも35年もたった。分離手術を経て、今、どんな暮らしをしているのかとずっと気になっていた。残念ながらベトちゃんは亡くなってしまったけど、ドクちゃんは今もがんばって生きている。映像の中盤で「ベト、僕のために犠牲になって『今』を与えてくれたことを心から感謝してる。だから一生懸命ベトの分も生きているよ」と兄に語りかけるシーンでは涙が出た。
ちなみに枯葉剤の影響はベトナム人だけでなく、アメリカの軍人にも出ているが、ベトナム戦争に出兵した韓国でも大きな影響を与えている。延べ30万人が従軍し、そのうち枯葉剤の被害者団体の会員が14万人くらいいるという。敵であろうが味方であろうが、被害者を多く出した枯葉剤の影響を忘れてはならない(暁)。


枯葉剤の影響で、身体がつながった形で生まれた「ベトちゃんとドクちゃん」のことは、当時、日本で大きく報道されて、ベトナム戦争の功罪を強く感じたものです。分離手術に成功し、その後、ベトちゃんが亡くなられたことまでは知っていましたが、今回、ドクちゃんが結婚もして、元気に過ごしている姿を映画を通してみることができ、少しほっとしました。けれども、決して生活は楽ではなく、命も人より短いと認識して暮らしているドクちゃんのことを思うと、つらいものがありました。
ドクちゃんが、フジくんとサクラちゃんを連れて、枯葉剤の二次被害を受けて生まれた子供たちのところに行く場面がありました。二人は五体満足に生まれてきましたが、奥さんのトゥエンさんも、もしかしたら障がいのある子が生まれるかもしれないと不安を抱えての出産でした。フジくんとサクラちゃんも、障がいを持って生まれてきた小さな子供たちに接して、もしかしたら、自分たちも障がい児だったかもしれないと内心思っている様子が見て取れました。
枯葉剤被害者は、480万人ともいわれていて、アメリカは謝罪していません。これから生まれてくる子供たちにも、被害がおよぶかもしれません。ほんとうに残酷なことをしてくれたと涙が出ます。
「僕の命の半分は兄のもの」と、懸命にいきるドクちゃん。できるだけ長生きされることを祈るばかりです。(咲)



公式HP:https://dokuchan-movie.com/ 
2024 日本
製作 / 制作  Kingyo Films Pte. Ltd. / Ruff Films LLC
配給 ギグリーボックス 

*参考資料
『記憶の戦争』イギル・ボラ監督インタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/483996221.html      


posted by akemi at 20:48| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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