2024年04月24日

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命   原題:Rapito

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(C)IBC MOVIE / KAVAC FILM / AD VITAM PRODUCTION / MATCH FACTORY PRODUCTIONS (2023)

監督:マルコ・ベロッキオ
脚本:マルコ・ベロッキオ、スザンナ・ニッキャレッリ
出演:パオロ・ピエロボン、ファウスト・ルッソ・アレジ、バルバラ・ロンキ、エネア・サラ、レオナルド・マルテーゼ

1858年、ボローニャ。ユダヤ人のモルターラ家に、教皇直属の兵士たちが押し入る。枢機卿の命で、もうすぐ7歳になる息子エドガルドを連れ去るのが目的だった。エドガルドは生後6か月のころ、キリスト教徒の使用人アンナから洗礼を授けられていたことから、異端審問所でカトリック教育を受けさせなければならないというのだ。
エドガルドの父モモロは、息子を奪還するべくユダヤ人組織の協力を仰ぐ。教会による非人道的なエドガルド・モルターラ誘拐の報は世界中に広がる。
だが、教皇ピウス9世は、洗礼を受けたエドガルドは永遠にカトリック教徒だとして親元への返還には応じない。そんな中、エドガルドは司祭からのカトリック教徒としての教育を受け入れていく・・・

わが子を取り戻そうと奔走する両親と、権力強化のため決して返還に応じようとしない教会側の争いは、イタリアをはじめ、時の皇帝ナポレオンやロスチャイルド家ら、全世界を巻き込んだ論争となりました。スティーヴン・スピルバーグが映画化に向けて書籍の原作権を押さえていましたが、映画化を実現したのはイタリアの巨匠マルコ・ベロッキオでした。これまでイタリアの史実をベースに描き続けてきたマルコ・ベロッキオ監督だからこそ描けたものと感じます。
1870年9月、イタリア王国軍がローマのピア門を破り入場した時、青年になったエドガルドを兄が迎えに来るという場面がありました。
中世以降、小国に分裂していたイタリアが、統一したイタリア王国として建国されたのは、1861年。ローマなどの教皇領が1870年に普仏戦争に乗じて併合され、イタリア半島はほぼ統一されたという歴史を今さらながら知りました。

本作からは、何より宗教が人間に及ぼす力を突き付けられました。キリスト教徒の使用人アンナは、赤ちゃんが瀕死の状態にあると思い込んで、リンボ(辺獄)に行かせない為にと洗礼を授けたのです。このことで思い出したのですが、私の知人が癌で余命数日の時に、家族が洗礼を受けさせました。本人はすでに意識不明だったそうで、よもやカトリック教徒として葬られることになるなどと思っていなかったと思います。家族の信仰を押し付けるのはいかがなものでしょう。
エドガルドの父モモロは、息子を返す条件は、家族が改宗することと言われますが、決して改宗することはありませんでした。信仰心のない私にも、宗教の力を感じさせてくれるエピソードでした。(咲)


東京国際映画祭2023年上映タイトル:KIDNAPPED(英題)

2023/イタリア、フランス、ドイツ/カラー/イタリア語/134分
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
配給:ファインフィルムズ
公式サイト:https://mortara-movie.com/
★2024年4月26日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開



posted by sakiko at 01:57| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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