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監督・脚本:ファティ・アキン(『クロッシング・ザ・ブリッジ 〜サウンド・オブ・イスタンブール〜』『女は二度決断する』)
出演:エミリオ・ザクラヤ、カルド・ラザーディ、モナ・ピルザダ、アルマン・カシャニ、フセイン・トップ、ソゴル・ファガーニ
クルド人のラッパー&音楽プロデューサーXatar(カター)の破天荒な人生
Xatarカター
1981年12月24日イラン北部クルディスタン州のサナンダジュ生まれ。
本名ジワ・ハジャビ(Giware Hajabi)。愛称はG。カターはクルド語で「危険」を意味する。
1985年 家族でドイツのボンに亡命。
ラッパー、音楽プロデューサー、レストラン経営者など様々な顔を持つ。
2015年に出版した自伝「Alles oder Nix: Bei uns sagen man, die Welt gehört dir(オール・オア・ナッシング:世界はお前のもの)」をベースに『RHEINGOLD ラインゴールド』は作られた。
イラン革命でイスラーム政権となり音楽が禁じられ、クルド人の音楽家の両親は命からがら演奏会場から逃げ出す。反体制運動をする最中、母はジワを出産。一家は逮捕され、ジワの最初の記憶は刑務所の中だ。数年後、出国し、滞在中のイラクで父が有名な音楽家であることから保護され、パリ経由、ドイツのボンに亡命する。
1996年、父が作曲した曲のコンサートが開かれ、家族は晴れがましい思いだったが、父は愛人を作って家を出ていく。その頃、歌がうまいパレスチナ人のサミーと出会う。クスリの売人になるが、不良たちにクスリを盗まれ、復讐のためにボクシングジムで戦い方を覚え、Xatar(カター:危険)と呼ばれるようになる。クスリを売っていたクラブでラップに出会い、作曲やキーボード演奏を楽しむようになるが、クスリの密売容疑で少年刑務所に。
出所後、オランダで音楽マネジメントを学ぶ。ボンに帰り資金稼ぎのために金塊強盗をし、国際手配され、シリアで8か月拘束された後、ドイツに送還され8年の禁固刑が言い渡される。見張りの目を盗んでレコーディングし、アルバムを完成させる。獄中から発売したアルバムはヒット、“ギャングスタ・ラッパー”として、さらに音楽プロデューサーとしても、その名を轟かせていく・・・
トルコ移民の両親のもと、ドイツで生まれたファティ・アキン監督が紡いだ壮大なXatar(カター)の物語。彼の自伝を読み、様々なことが描けると確信。カターにインタビューを重ね、大胆に脚色した脚本に。カターについて知らない観客やドイツのヒップホップに興味のない観客にもわかるストーリー、さらにカターのファンにも納得のいくものを心掛けたとのこと。撮影現場でカターからアドバイスを受け、カター自身も納得のいく作品になっているようです。
本作は、ファティ・アキン監督の亡き父に捧げられていますが、カターが父親と語る場面が味わい深く、印象に残っています。
1986年、オペラハウスでワーグナーの「ラインの黄金」のリハーサルを聴きながら、父が「ラインの黄金は不滅。掴んだ者は手放さない」とジワに語る場面。そして、刑務所に父が面会に来た時の会話。収監されている時間も活用するという父の言葉に、カターは作曲しCDまで作ってしまうのです。
イラン好きの私には、イラン生まれのカターに興味津々。革命後、クラシック音楽のコンサート会場に、ターバン姿の聖職者と革命防衛隊が押し入ってくる場面は、ちょっとオーバーかなと思いましたが、あり得ないことでもないなぁと。
ジワの母を演じたモナ・ピルザダも、ジワの妻となるシーリンを演じたソゴル・ファガーニも、ドイツで活躍するイラン人の女優さん。どんな経緯で、今ドイツにいらっしゃるのかも気になります。1979年の革命後、どれだけ多くの人たちが、世界各地に散らばってしまったことでしょう。そんな移民の思いも込められた作品です。(咲)
2022年/ドイツ・オランダ・モロッコ・メキシコ/ドイツ語、クルド語、トルコ語、オランダ語、英語、アラビア語/140分/1.85:1 *ペルシア語部分もありました(咲)
日本語字幕:吉川美奈子
配給:ビターズ・エンド
公式サイト: https://www.bitters.co.jp/rheingold/
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