2024年02月25日

すべての夜を思いだす

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(C)2022 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF

脚本・監督:清原 惟
音楽:ジョンのサン&ASUNA
ダンス音楽:mado&supertotes,ESV
出演:兵藤公美、大場みなみ、見上 愛、内田紅甘、遊屋慎太郎、奥野 匡

東京郊外、多摩ニュータウン。
大きな樹の下で、それぞれの楽器を奏でる人たち。
大型団地の朝が始まる。

その日、誕生日を迎えた知珠(兵藤公美)。
友人からの転居通知の葉書を手に出かける。まず寄ったのは、ハローワーク。経験を活かして着物の着付の仕事を希望しているが無いと言われる。友人の転居先である聖ヶ丘を目指して歩いていく途中、覗いた和菓子屋で、元の同僚に声をかけられる。知珠が人減らしで辞めさせられて、人手が足りなくて大変なこともあると言われる。なんとも恨めしい。友人の家を探す途中で、若い女性がダンスするのを真似てみる・・・

ガス検針員の早苗(大場みなみ)。

いつも回る諏訪団地で、ベランダからお婆さんが声をかけてきて蜜柑をくれる。同じ棟に暮らす老人が、早朝から行方がわからないので見かけたら家族のもとに届けてほしいと頼まれる。見つけた老人を送り届けようとするが、家は反対方向の永山だという。昔、住んでいたらしい家に連れていかれる・・・

大学生の夏(見上愛)。
生まれ育ったこの街で今日もダンスをし、友人に会い、カフェでお茶をする。
違うのは、いつも近くに居た友人の彼がもういないこと。一回忌の今日、亡き彼の実家に、写真の現像引き換え券を届けにいくが、彼の母親から「あなたが引き換えて」と言われる。引き取った写真に映っていたものを見て、夏は彼と過ごした花火をした冬の夜を思い出す・・・

夕方、多摩市役所の「男性は無事発見されました」というアナウンスが流れる・・・


冒頭、赤いツツジが脇に咲く広い坂道が映り、続いて、京王線と小田急線が並行して走る姿。多摩ニュータウンに程近い、高幡不動に住んでいる私には馴染み深い風景。55年前、百草団地に引っ越してきた時には、多摩ニュータウンに団地が立ち始めているのがすぐ眼下に見えましたが、当時は、バスの便も悪く、車なら10数分で行ける多摩センターも遠い場所でした。妹が車を運転するようになってからは、よく家族で四季折々の自然を楽しみに行ったものです。それが、25年前に多摩モノレールが出来て、高幡不動から14分で行けるようになって、ぐっと近い場所になりました。

本作は、清原惟監督が幼稚園の頃に住んでいた多摩ニュータウンの中でも初期に造成されたエリアで撮影されています。木も生い茂り、すっかり落ち着いた団地。
主演の3人の女性は、直接、言葉を交わすことはないけれど、知珠が迷いながら歩いている姿を早苗が見かけたり、夏が踊るのを遠くで真似て知珠が踊っているのに夏が気付く・・・など、さりげない形で触れ合うことが描かれています。私たちも、気が付かないうちに経験している日常。
認知症で徘徊しているおじいさんを演じたのは、アッバス・キアロスタミ監督の遺作『ライク・サムワン・イン・ラブ』の主演を務めた奥野匡さん。すっかりおじいさんになりました。(成りきっているのかもですが)多摩市役所のアナウンスも、ほんとうにあるそうです。
初長編の前作『わたしたちの家』から2作品連続ベルリン国際映画祭に出品。最新作『すべての夜を思いだす』は、2023年/第73回ベルリン国際映画祭フォーラム部門出品の後、日本に先駆け北米公開を果たしています。何気ない日常が、静かに心に響きます。(咲)



◆初日舞台挨拶
3月2日(土) 18:25の回終了後
会場:ユーロスペース(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 3F)
登壇者(予定):清原惟監督、兵藤公美、大場みなみ、内田紅甘、遊屋慎太郎


第26回PFFスカラシップ作品

2022年/日本/116分
配給:一般社団法人PFF
公式サイト:https://subete-no-yoru.com/
★2024年3月2日(土)より渋谷ユーロスペースにて公開ほか全国順次公開



posted by sakiko at 03:41| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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