2024年02月23日
落下の解剖学(原題:Anatomie d'une chute)
監督:ジュスティーヌ・トリエ
脚本:ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ
出演:ザンドラ・ヒュラー(サンドラ)、スワン・アルロー(ヴァンサン)、ミロ・マシャド・グラネール(ダニエル)、アントワーヌ・レナルツ(検事)
人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。
はじめは事故と思われたが、
次第にベストセラー作家である
妻サンドラに殺人容疑が向けられる。
現場に居合わせたのは、
視覚障がいのある11歳の息子だけ。
証人や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、
登場人物の数だけ<真実>が現れるが──。
ロケーションが美しいです。雪山に建つ家に住むのはサンドラ夫婦、視覚障害のある一人息子ダニエルとボーダーコリーのスヌープ。冒頭はインタビューに答える作家の妻サンドラ。上の階で作業する夫が大音量で音楽をかけています。階下の二人の会話がしばしば聞こえなくなります。なぜ注意しにいかないのだろうと疑問がわくほどです。
夫が亡くなって警察の捜査が入り、疑われたサンドラは旧知の弁護士に相談します。この二人の親密度が妙に高くて、いろいろ勘ぐってしまったり、最初の発見者の息子のショックを思ったりしてしまいます。法廷場面にけっこうな時間を割いていますが、こちらは彼女が犯人なのか、事故なのか、真実はどこに?と気にしているので、緊張は解けません。
上にあげた公式HPの紹介文の「登場人物の数だけ真実が」は、「観た人の数だけ真実が」に言い換えられそうです。
愛犬スヌープ役のボーダーコリーのメッシがパルムドッグ賞を受賞しました。(白)
息子ダニエルを演じたミロ・マシャド・グラネール、目が見えない役柄を見事に演じていました。中でも時折奏でるピアノ曲のアレンジが、時に激しく、時に寂し気にと変わり、気持ちを表していて素晴らしかったです。 そして、弾いていた曲のメインは、私が小学生高学年の頃にピアノを習っていた時に、「ブルクミュラー25の練習曲」の中で一番好きだった曲。イサーク・アルベニスのピアノ曲《スペインの歌》作品232の第1曲「前奏曲」として書かれた《アストゥリアス (伝説曲)(西語:Asturias (Leyenda))》です。アンダルシアのアラブ音楽に影響を受けた旋律だそうで、まだ10歳位だった私が心惹かれたとは!
あと興味深かったのは、裁判の場面で、サンドラがフランス語では自分の思うことをちゃんと伝えられないから、英語で話してもいいかとお願いした部分。フランス人と結婚し、長年、フランスで暮らしていても、微妙なことは言い表せないのだと思います。裁判の行方を固唾をのんで見守りました。(咲)
◎第76回カンヌ国際映画祭<最高賞>パルムドール受賞
◎第81回ゴールデン・グローブ賞 脚本賞/非英語作品賞2部門受賞
2023年/フランス/カラー/ビスタ/152分
配給:ギャガ
(C)LESFILMSPELLEAS_LESFILMSDEPIERRE
https://gaga.ne.jp/anatomy/
★2024年2月23日(金・祝)TOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開
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