2024年02月06日

一月の声に歓びを刻め

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監督・脚本:三島有紀子
撮影:山村卓也、米倉伸
音楽:田中拓人
出演:前田敦子(れいこ)、誠を哀川翔(誠)、カルーセル麻紀(マキ)、坂東龍汰(トト・モレッティ)、片岡礼子(美砂子)、宇野祥平(正夫)、哀川翔(誠)、原田龍二(龍)、松本妃代(海)、長田詩音(さら)、とよた真帆(真歩)

洞爺湖畔で一人暮らしているマキの元に、娘の美砂子夫婦と孫娘のサラがやってきてお節料理を囲む。マキはもう一人の娘、れいこを幼いころ亡くしていた。それをきっかけにマキは自分の「男性」性を嫌悪し、女性として生きて来た。美砂子はそんな父を受け入れられず、いまだに「お父さん」と呼び、娘のさらに非難されている。
八丈島の牛飼いの誠の娘、海が身重の身体で帰ってきた。妻を早くに亡くし男手一つで育てた誠だったが、結婚したことも知らされなかった。海の部屋で離婚届を見つけた誠は仰天するが、慮って事情を尋ねることができない。
大阪堂島。れいこは元恋人の葬儀に出席するため、故郷に戻ってきた。一人歩いていて「レンタル彼氏」だという若い男に声をかけられる。子どものころ性被害に遭ったれいこは、他人の身体に触れられずにいたが「トト・モレッティ」と名乗る彼に興味を覚えて付き合うことにした。

三島監督は自分の体験を元にこの映画を作られたそうです。生と性、罪をテーマに3つの物語が展開します。洞爺湖の中島、八丈島、大阪堂島と3つの島が舞台です。島をつなぐのが船、「船で向かう者」「船を待つ者」「船でやってきた者」がそこに登場し、ゆるやかなつながりがあります。
観ていて驚いたのは、当時80歳のカルーセル麻紀さん。最初の物語の主人公を、零下20度の厳寒の中ワンカーットワンシーンで演じたこと。亡くなった娘を思っての慟哭のシーンにくぎ付けになりました。哀川翔さんの娘を思う普通の父親もとてもはまっていましたし、最後の堂島編の前田敦子さんは迷った末に引き受けたこの役で、またこれまでのどの役とも違う顔、表情を見せてくれています。性被害が、本人だけでなく、周りの人の人生に長く大きな影響をもたらすということをいまさらながら思いました。
タイトルは過去の傷や悲しみを抱えていても「再スタートの1月に内や外から聞こえる声を歓びたい」ということのようです。(白)


2024年/日本/カラー/シネスコ/118分
配給:東京テアトル
(C)bouquet garni films
https://ichikoe.com/
★2024年2月9日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 00:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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