2024年01月21日
ノスタルジア 4K修復版 原題:NOSTALGHIA
監督・脚本:アンドレイ・タルコフスキー
脚本:トニ一ノ・グエッラ
撮影監督:ジュゼッペ・ランチ
出演:
アンドレイ・ゴルチャコフ:オレーグ・ヤンコフスキー
ドメニコ:エルランド・ヨセフソン
エウジュニア:ドミツィアナ・ジョルダーノ
ゴルチャコフの妻:パトリツィア・テレーノ
髪に夕オルを巻いた女:ラウラ・デ・マルキ
ドメニコの妻:デリア・ボッカルド
清掃人:ミレーナ・ヴコティッチ
イタリア中部トスカーナ地方、霧に包まれた森。モスクワから来た詩人アンドレイ・ゴルチャコフと通訳の女性エウジェニアを乗せた車が着く。アンドレイは、18 世紀にイタリアを放浪したロシアの音楽家パヴェル・サスノフスキーの足跡を辿っている。農奴制が敷かれた故国に戻り自死したサスノフスキーを追う旅。その旅も終りに近づき、アンドレイは病に冒されていた。
古都シエナ南東の村。エウジェニアはピエロ・デラ・フランチェスカが描いた「マドンナ・デル・パルト」(出産の聖母)を見に行こうと誘うが、アンドレイは同行しない。ひとりで教会に入るエウジェニア。燭の炎がまばゆい光を放つ聖母像に祈りを捧げる女たち。聖母像の胸からたくさんの鳥が飛び立つ。
シエナの聖カタリナも訪れたという古の温泉地バーニョ・ヴィニョーニ。エウジェニアがアルセーニイ・タルコフスキーの詩集をイタリア語訳で読んでいると、アンドレイが「詩は翻択不可能。やめておけ」と言う。トルストイもプーシキンもロシア理解の為に訳は必要という彼女に、国境をなくせばいいと答えるアンドレイ。
温泉地で人々に狂信者と噂されるドメニコという男。世界の終末が訪れたと信じ、家族で 7 年間もあばら家に閉じこもり、聖カタリナと言葉を交わしたと触れ回っている。シェパード犬をつれて散歩している彼の姿に、強く心を打たれたアンドレイがたどたどしいイタリア語で話しかけると、ドメニコは自分が果たせなかった願いを託す。蝋燭の火を消さずに広場を往復することができたなら、世界は救われると言う・・・
54年の短い生涯で8作品の劇映画を世に送り出し、今なお多くの映画人や芸術家に影響を与え続ける、旧ソ連映画界の巨匠アンドレイ・タルコフスキー。
1962年に長編1作目『僕の村は戦場だった』を監督、ヴェネチア国際映画祭でサン・マルコ金獅子賞等を受賞。1967年にロシアの伝説的な画家を描いた『アンドレイ・ルブリョフ』を完成させるが、歴史解釈をめぐってソ連当局の激しい批判を受け、5年間の上映禁止を言い渡される。一方で同作品は1969年のカンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞。その後も『惑星ソラリス』(72)、『鏡』(75)、『ストーカー』(79)で世界的な評価を確立するが、ソ連国内の厳しい検閲は続き、ソ連を出国。長編6作目となる『ノスタルジア』は、初めてソ連国外のイタリアで3年半かけて製作された。1983年カンヌ国際映画祭で「この映画の創造に対する特別大賞」「国際映画批評家連盟賞」「エキュメニック審査員賞」の3冠に輝いた。
今回公開される『ノスタルジア 4K修復版』は、2022年に撮影監督ジュゼッペ・ランチ監修のもと、ローマのチネテカ・ナチオナーレの協力で4K修復が行われたもの。ボローニャ復元映画祭2022でワールドプレミアされた。
詩情溢れる映像に秘められた燃えたぎるような思い。カラーで撮られたイタリアでのサスノフスキーを追うアンドレイの旅には、故国を離れたタルコフスキーの思いが重なります。
セピア色の単色で撮られているのは、ロシアの故郷でしょうか。女性、子ども、犬、馬・・・。ラストには、イタリアの大きな遺跡の中に佇む故郷の小さな家・・・ さらに帰れない地への切ない気持ちが迫ってきました。母の思い出に捧ぐとありました。涙。
あと、アンドレイが、「イタリア人は靴を持ちすぎる。この靴は、10年履いている!」と叫ぶ場面があって、タルコフスキーがイタリアで暮らして感じた実感の一つなのだろうと、思わずクスッとしてしまいました。 (咲)
1983 年/イタリア=ソ連合作/ビスタ/カラー/126 分
日本語字幕:橋本克己
配給:ザジフィルムズ
公式サイト:http://www.zaziefilms.com/nostalghia4k/
★2024年1月26日(金)よりBunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー!
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