2024年01月07日
ニューヨーク・オールド・アパートメント(原題: THE SAINT OF the Impossible)
監督:マーク・ウィルキンス
原作:アーノン・グランバーグ著「De heilige Antonio」
脚本:ラニ=レイン・フェルサム
撮影:ブラク・トゥラン
出演:アドリーノ・デキュラン(ポール)、マルセロ・デュラン(テイト)、マガリ・ソリエル(母ラファエラ)、サイモン・ケザー(エドワルド)、タラ・サラー(クリスティン)
ペルーからニューヨークにやって来た不法入国の家族。母親のラファエラはウェイトレスとして働き、女手一つで双子を育てている。ポールとテイトの兄弟も、配達のバイトで母を助けているが、語学学校にも通っていて家計は苦しい。経済的な問題だけでなく、不法滞在の3人は見つかれば強制送還されてしまう。夢見たアメリカでの生活だったが、ポールとテイトには自分たちが誰の目にも止まらない透明人間のように思えるのだった。
ある日学校にミステリアスな美女、クリスティンがやってくる。兄弟はたちまち一目ぼれ、何の希望もなかった毎日に光が差し込んできた。
不法移民の映画はいくつか観てきましたが、この作品ではペルーから。なんとそんなに遠くからアメリカを目指して?と驚きます。どんなに過酷な旅だったか、想像もできません。
兄弟が恋に落ちているころ、働きづめのラファエラは親しくなった男、エドワルドの甘言にのり、メキシコ料理のデリバリーを始めてしまいます。準備も何もめちゃくちゃで、うまく行くはずがないと素人目でもわかるほどです。お察しのとおり母子ともひどい目に遭いますが、絶望はしません。よりどころがあれば人間は強くなれると思えました。今辛い境遇にある移民の方々、戦火の中の子どもたち、希望をなくしている人々に思いをはせてください。(白)
語学学校で、先生が「戦争を経験した人は?」と尋ねる場面がありました。肌の色も様々な20名程の生徒の半数以上が手をあげました。ペルーの双子の兄弟も、クロアチアのクリスティンも、なぜ国を出てきたかは映画では語られませんが、より良い暮らしをしたいと願ってのこと。
日本に住むイランやトルコの人たちの中に、不法滞在でいつ捕まって強制送還されるかを気にしながら暮らしている方がいるのを身近に見てきました。住みたいところに住まわせてあげればいいのに・・・と思うのですが、国によって、それぞれ規制があって、思うようにはいかないのが残念です。国境のない世界を!と思います。
ポールとティトを演じたのは、ペルーの全国オーディションで選ばれた本当の双子の兄弟。大学でアドリアーノは医学、マルセロはシステム工学を専攻。LOS MORDOSというロックバンドで兄弟で活動中。本作が映画初出演。とてもピュアで、演技と思えない自然さ。母ラファエラが女性として生きようとしているのも、息子たちは応援しています。もっとも、メキシコのブリート屋の共同経営を持ちかけた男の胡散臭さはちゃんと見抜いています。母ラファエラも息子たちのことを思いながら、自分の人生を生きようとしていて素敵です。(咲)
『ニューヨーク・オールド・アパートメント』というタイトルから不法移民の話だとは思わなかった。観始めて、ペルーからニューヨークに来た人たちの話だと知った。この親子3人はどのような方法でニューヨークに来たのだろう。よりよい生活を求めての不法入国というけど、そんなにうまくいくとは思えない。それに、言語が違う国での生活というのはかなり不便だと思うけど、それでも、この親子3人やクリスティンだけでなく、苦難のはてにニューヨークにたどり着いた人たち、アメリカン・ドリームを夢見た人たちの思い、希望、未来を考えてしまった。母親は、周りの友人たちの協力でなんとか移民局に捕まらずに済んだところで映画は終わったけど、その後も心休まる間がない暮らしは続いていくのだろうと思うと、この家族が安心して暮らせる居場所をみつけられますようにと祈った。母親を演じたのは『悲しみのミルク』(09)に出演していたマガリ・ソリエル。この作品では彼女の役の設定にびっくりした(暁)。
2020年/スイス/カラー/ビスタ/98分/PG12
配給:百道浜ピクチャーズ
(C)2020 - Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue
https://m-pictures.net/noa/
★2024年1月12日(金)新宿シネマカリテほか全国公開
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