2023年12月26日
ブルーバック あの海を見ていた(原題:Blueback)
監督・脚本:ロバート・コノリー(『渇きと偽り』)
原作・脚本協力:ティム・ウィントン「ブルーバック」(さ・え・ら書房刊)
出演:ミア・ワシコウスカ(アビー)、アリエル・ドノヒュー(アビー/幼少期)、イルサ・フォグ(アビー役/青年期)、ラダ・ミッチェル(ドラ)、リズ・アレクサンダー(ドラ役/晩年期)、ペドレア・ジャクソン(ブリッグス役/青年期)、クラレンス・ライアン(ブリッグス)、エリック・トムソン(コステロ)、エリック・バナ(マッカ)
海洋生物学者のアビーは、母のドラが脳卒中で倒れたと知らせを受け、急遽故郷のオーストラリアに戻った。美しいターコイズブルーの海は昔のままだが、開発の波が少しずつ押し寄せていた。アビーは口がきけなくなった母の世話をしながら、少女時代を思い起こす。
ドラは若いころから熱心な環境活動家で、アビーは母から海のすばらしさを学び、今の道を選んだのだった。8歳の誕生日に初めて潜った入江で、大きな青い魚に出会い、”ブルーバック”と名前をつけた。。
ロケ地は西オーストラリア州のブレマー・ベイ(Bremer Bay)。ブレマー川の河口にあり、州都のパースから車で5時間半。オルカ(シャチ)、シードラゴン(タツノオトシゴ)の観察ツアーで有名なのだとか。この映画にもザトウクジラの群れが出てきました。
あの人懐こい青い魚はベラ科の「ウエスタン・ブルーグローバー」。長命な個体は70年も生きるそうです。雌雄同体が一般的で、オス1匹、メス1,2匹と幼魚たちが暮らし、オスが群れからいなくなると、メスの1匹がオスに変化するとか。なんと面白い生態なんでしょう。
美しい海を観ていて、基地のために埋め立てられる沖縄の海が浮かびました。戦争で痛めつけられた後、土地を米軍に明け渡さなければならなかった沖縄の人たちを思いました。(白)
耳石とよばれる魚の耳の骨は平衡感覚をつかさどる組織で、樹木の年輪のように1年に1本の輪紋が刻まれるそうです。巨大な青い魚の“ブルーバック”は、耳石の輪紋から約70年生きられることがわかっているとのこと。乱獲してしまっては、長生きの魚も絶えてしまいます。
本作は、美しい海と生態系を守ろうと日々活動する母親を見て育った少女が海洋生物学者となり、母と故郷を思う物語。海洋保護区となった故郷の美しい湾は、母の努力がなければとっくに開発が進んでいたかもしれません。
97年に出版されたティム・ウィントンの原作小説に魅了されたロバート・コノリー監督が、映画化の夢を叶えて作り上げました。コノリー監督が2020年に製作し、オーストラリア映画史上、大ヒットを記録した『渇きと偽り』は、干ばつの続くオーストラリアの大地を舞台にしたサスペンスフルな一作でした。本作は母と娘の情も描いた環境保護を考えさせられる心温まる物語です。(咲)
2022年/オーストラリア/カラー/スコープ/102分
配給:エスパース・サロウ
(C)2022 ARENAMEDIA PTY LTD, SCREENWEST (AUSTRALIA) LTD AND SCREEN AUSTRALIA
https://blueback.espace-sarou.com/
★2023年12月29日(金)シネスイッチ銀座ロードショー
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