2023年12月20日

阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人

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©︎МИНИСТЕРСТВО КУЛЬТУРЫ И СПОРТА РЕСПУБЛИКИ КАЗАХСТАН

監督:佐野伸寿 エルダル・カバーロフ アリヤ・ウバリジャノバ 
脚本:佐野伸寿 撮影:サマト・シャリポフ 
美術:ヌルブラト・ジャバコフ 
写真:松元隼人
出演:小笠原瑛作<KNOCKOUT―REDフェザー級王者(クロスポイント吉祥寺)> スルム・カシュカバエフ アサナリ・アシモフ 佐野史将 かざり

カザフスタンのソ連政治犯強制収容所に、たった一人送り込まれながらも生還した阿彦哲郎の物語

1930年、樺太で生まれた阿彦哲郎さん。ソ連侵攻で、幼い弟に母を託して北海道に引揚げさせ、阿彦さんは命ぜられるまま樺太の鉄工所で働く。1948年、ソ連にスパイ容疑で逮捕され10年の刑となる。カザフスタンの強制収容所に送られ、銅鉱山で働かされる。衰弱し、スパスクの療養収容所に移され、そこで出会った医師のお蔭で奇跡的に回復する。スターリンが死んだ翌年の1954年に釈放されるが、そのまま永久流刑となり、KGBの監視下での生活が続く。その後、ドイツ系女性と結婚、1男1女を授かる。ソ連崩壊後の1994年、ようやく日本への一時帰国を果たす・・・

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©︎МИНИСТЕРСТВО КУЛЬТУРЫ И СПОРТА РЕСПУБЛИКИ КАЗАХСТАН

阿彦哲郎さんが逮捕され、カザフスタンの強制収容所に送られた時は、まだ未成年。言葉も通じないところに放り込まれ、どれほど不安で、つらかったことかと胸が痛みます。
さらに、10年の刑期を終えれば日本に帰れるという一縷の望みも、永久流刑という形で絶たれてしまうという理不尽。
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©︎МИНИСТЕРСТВО КУЛЬТУРЫ И СПОРТА РЕСПУБЛИКИ КАЗАХСТАН
阿彦さんが収監された先で知り合うカザフ人将校アカジャンもまた、ある村の襲撃を命ぜられ、「そこには武装ゲリラはいない」と言ったところ、スパイ容疑で逮捕されたと語っています。
阿彦さんが収容所を出るとき、敬虔なムスリムのカザフ人の年配の男性から、「カザフ人は客人を大事する。ここを出たらカザフ人を訪ねなさい」と言われます。 そんな心優しいカザフの人々をないがしろにしてきたのがソ連。スターリン生誕70周年記念にカザフスタンで核実験を行ったことにも映画で触れています。どれだけ蹂躙すれば気が済むのでしょう・・・

映画の冒頭、ソ連が樺太に侵攻してきた場面の中で、電信局の交換手をしている阿彦家の隣人の女性かざりが、集団自決した場面が出てきました。 1974年に完成しながら、36年の時を経て2020年7月に公開された映画『樺太1945年夏 氷雪の門』で、その時のことが詳しく描かれていました。 
『樺太1945年夏 氷雪の門』主演二木てるみさんインタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2010/karahuto/index.html
不可侵条約を破って侵攻してきたソ連。ロシアとなった今も、本質は変わらないと悲しくなります。(咲)



2022年/カザフスタン・日本/112分/1.85:1/カラー/DCP/G
製作企画:カザフスタン共和国文化省 日本カザフスタン国交樹立30周年記念作品 製作:ボリス・チェルダバエフ アリヤ・ウバリジャノバ 吉村秀一 佐野伸寿 支援:文化庁文化芸術振興補助金(国際共同制作映画)
配給:Studio-D JAPAN 配給協力:UPLINK 
公式サイト:https://ahiko-samurai.com/
★2023年12月22日(金)よりUPLINK吉祥寺ほか全国順次ロードショー

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◆同時公開:『ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代』

posted by sakiko at 10:16| Comment(0) | カザフスタン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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