監督:福間雄三
原作:太宰治「未帰還の友に」
脚本:大隅充 福間雄三
撮影:根岸憲一
出演:窪塚俊介(先生)、土師野隆之介(鶴田康平)、清水萌茄(マサ子)、萩原朔美(井伏鱒二)、矢島諒、君澤透
小説家の「先生」のところには学生たちがやってくる。酒を酌み交わしては、文学や国家の話に花咲かせる。学生の中でもよく気が合ったのは仙台出身の鶴田だった。次第に手に入りにくくなった酒をなんとか飲みたいと、先生はおでん屋のおやじに娘のマサ子の縁談を持ち掛ける。帝大の学生だぞと鶴田を人身御供に、酒にありつくのだった。マサ子と鶴田は思いのほか仲良くなるが、戦況はますます厳しく、学生にも召集令状が届くようになった。学生たちは恋の経験もないままに次々と戦地へ送られていく。
原作は太宰治「未帰還の友に」。小説家の「先生」は太宰治本人のことと思われます。先生を慕って集まってくる酒を飲みたいばかりにあれこれ算段する先生と学生たち。学生たちと鮭を酌み交わし、声高ではなく反戦を繰り返し唱えている作品。
窪塚さん演じる先生は、写真で知る太宰と雰囲気が似て、親しい学生たちが兵隊にとられて帰ってこない悲哀をにじませています。戦後の日本を背負う若者を国のためと死なせてしまう国家と、無為に過ごしている自分への怨嗟もみてとれます。自分の家族や恋仲の女性の話でなく、年代を越えて結ぶ友情を描いたこういう作品のほうがいいなぁ。
鶴田を演じた土師野隆之介さんは『ロボット修理人のAi(愛)』(2020/田中じゅうこう監督)で、インタビューさせていただきました。当時高校3年で学校からそのまま取材場所に来てくれました。素直で明るい男の子で、また映画で会えて嬉しいです。無事に進学した後、ただ今ノルウェーに留学中。instaに写真がたくさんありました。(白)
2023年/日本/カラー/DCP/75分
配給:トラヴィス
https://mikikan.com/
★2023年12月15日(金)アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
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