監督・脚本・編集:瑚海(さんごうみ)みどり
撮影:須藤しぐま
音楽:34423
出演:瑚海みどり(楠木一葉)、二階堂智(楠木大地)、曾我部洋士(大河原誠)、亀田祥子(大河原夏美)、月田啓太(大河原啓太)、
永楠あゆ美(佐々木樹里)、Ami Ide(司)、KOTA(あずみ)、吉岡礼恩(悦生)、根口昌明(マサアキ)、野井一十(おっちゃん)浅地直樹(児玉)、井上薫(古瀬)、露木心菜(ここな)、露木容子(ここなのお母さん)
一葉はアスペルガー傾向(発達障害グレーゾーン)にある女性。おしゃべりでパワフル、正義感が強い。思ったことがすぐ口から出てしまうので、人との摩擦も多い。母親の一周忌の日、叔父に「子どもはもう作らないのか」と言われて心が騒ぐ。一葉は年齢のせいでもう産めないと返事をするが、気持ちが収まらない。15年前に流産したことでわだかまりがあった。夫の大地は、一葉の性格やアスペルガー傾向のことを理解しているが、それでもすれ違いや衝突は起きてしまう。
アスペルガー症候群は、現在は自閉症、広汎性発達障害など軽度から重度までも含めて「自閉症スペクトラム症=ASD(autism spectrum disorder)」と総称されるようになりました。近年多くなっている印象がありますが、急速に社会に認知されるようになってきたせいかもしれません。発達障害という言葉でひとくくりにできないほど、その現れ方も千差万別です。
この映画では、そのグレーゾーンにある一葉のこだわりや悩みを描いています。誰にもわけへだてなく、人に関わりすぎる一葉は、正直な子どもの心を持っている人。夫はまるで一葉の保護者のように寛大な大人で、いい人に巡り合いました。でも会社でストレスが溜まっても妻に愚痴をこぼすことはできません。きっと一葉は過剰に反応してしまうでしょうから。
我が家にもASDと診断された子が一人います。振り返ると私も子どものころから、ひどくそそっかしくて注意力散漫、科目によって成績の差が激しく、一人も平気でわが道を歩いて来たような気がします。こだわりも特化すれば才能になる・・・はずです。
「妊娠・出産の自由」を阻む社会については、(暁)さんに語ってもらいますね。(白)
これはアスペルガー症候群の女性を描いた作品だけど、もうひとつの側面は、「子供をもつ・もたない」について考える映画でもあります。
かつて流産をしたことで、子供を作らないつもりだった一葉と夫の大地。叔父に「子どもはもう作らないのか」と言われて心が騒いでしまった一葉は、夫もほんとは子供が欲しいのではないかと考えてしまい、夫に確認すればいいのにそれもせず、すでに子供を産める年ではないので、一人で養子縁組のことを調べて、養子縁組をしている法人を訪ねたりと先走ります。でも夫はそうは思っていなかった。
「結婚したら子供をつくる」という考え方が世間一般の常識のようになっていて、叔父のように、悪気なく「子どもは作らないの?」と、世間の人は言います。ここ数年、出生率の低下が話題になっているけれど、おかげで、産めない人、子供はほしくないと考える人に対する圧力は大きく、一葉も「やっぱり子供は必要なのかな」と悩むのです。社会のニーズや圧力によって、子供を産まなくてはと思わず、人の意見に左右されない社会が理想だと思うので、最後にはそのようにたどり着いてほっとしました。
この作品のタイトルは『99%、いつも曇り』ですが、吉田夕日監督の『1%の選択』という作品も11月11日から公開されています。こちらは出産に際して助産婦さんに依頼するのは1%未満とのことでつけられたタイトルですが、助産婦さんの仕事を紹介した作品です。偶然とはいえ、同じ時期に「子供をもつということ&親になること」に関する映画が公開されているので、こちらも観て、日本における「出産の自由」について考えてみませんか(暁)。
(撮影:宮崎暁美)
★瑚海みどり監督インタビュー記事はこちらです。
2023年/日本/カラー/110分
配給:35 Films Parks
(C)35 Films Parks
https://35filmsparks.com/
★2023年12月15日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開