2023年11月26日
父は憶えている 原題:Esimde 英題:This is What I Remember
監督・脚本:アクタン・アリム・クバト
出演:アクタン・アリム・クバト、ミルラン・アブディカリコフ、タアライカン・アバゾヴァ
キルギスの村。クバトは、ロシアに出稼ぎに行き20年間行方不明になっていた父ザールクを見つけて連れ帰る。父はロシアにいる間に記憶を失っていた。母ウムスナイは夫が亡くなったと思って、村の有力者の男と再婚している。同級生たちが歓迎の宴を開くが、クバトはその座につかず掃除ばかりしている。クバトは父を村のあちこちに連れていくが、記憶は戻らない・・・
同級生たちは、自分たちのことを忘れてるのを寂しく思いながらも、クバトのお蔭で村が綺麗になっていいな等と話していて、思わず笑ってしまいます。それでも皆、妻が再婚していることを心配しています。
ウムスナイの再婚相手ジャイチは離婚に応じる気は全くありません。モスクの導師に相談にいくと、夫が「タラーク(離婚)」を3回言わないと離婚は成立しないと言われます。悩むウムスナイに、モスクの管理人のナジムバイは、「自分の心のままにした方がいい」と優しく声をかけます。
アクタン・アリム・クバト監督は、以前の作品でも、イスラームの教義を厳しく守る人たちを登場させていて、地域の伝統を守りながら信仰心を持つ人との対比を描いています。
2022年の東京国際映画祭で『This Is What I Remember(英題)』のタイトルで上映された折のQ&Aで、クバト監督は、「私の経験したイスラームは、地元の伝統に結び付いていました。現代のイスラームは暴力的になって、伝統と食い違うことが多いように感じます。伝統を大事にしたい人たちは、イスラームを信じているのですが、心の一部には、伝統的なテングクの気持ちが残っています。私自身、信仰に反対ではなくて、アラビア風のイスラームには抵抗を感じています。その考えを主人公の一人である女性を通じて表そうと思いました」と語っています。
東京国際映画祭 キルギス『This Is What I Remember(英題)』アクタン・アリム・クバト監督Q&A報告 (咲)
イスラームでは、女性からも離婚するkhulu'(フルウ、本作の字幕ではクル)という方法がありますが、妻側が夫から貰っている婚資相当額を返還する必要があるとのこと。ウムスナイが何度か「私からクルするしかない」と口にしています。
ザールクが、林の木の幹に一生懸命白いペンキを塗っているのですが、この林はウムスナイと若い頃によく一緒に歩いていたところ。二人はまた仲良くこの林を歩くことができるのでしょうか・・・ (咲)
クバトはロシアに出稼ぎに行ったまま23年も行方不明になっていた父ザールクをみつけて連れ帰たものの、父はロシアにいる間に記憶を失ない自分のこともわからない。ザールクの妻ウムスナイは夫が亡くなったと思って村の有力者と再婚してしまっている。クバトは父を村のあちこちに連れていくが記憶は戻らない。どこの国でも起こりうる事を描いているが、妻の混乱と迷い、決断が一番印象に思った。イスラム圏では妻からの離婚申し出が認められないのかと思っていたけど、この映画では妻からも可能ということも描かれていた。それはやはりキルギスだから?
でも、道師はウムスナイが相談に行った時、彼女に対して、女性からも離婚を言い出せるとは言っていない。門番?の方がそれを伝える。
最後、ザールクとウムスナイがよく歩いていたというところに、ウムスナイの歌が流れ、一瞬、顔を向けるザールク。
監督自身がザールクを演じ、息子役は監督の実の息子だという。クバト監督は一言も言葉を発しないけど、ゴミをひろい歩いたりして、とぼけた演技が見もの(暁)。
2022年/キルギス・日本・オランダ・フランス/カラー/1:1.85/105分/キルギス語・アラビア語・英語
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:https://www.bitters.co.jp/oboeteiru/
★2023年12月1日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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