2023年11月09日

ぼくは君たちを憎まないことにした   原題:Vous n‘aurez pas ma haine 英題:YOU WILL NOT HAVE MY HATE

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(C)2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion

監督・脚本:キリアン・リートホーフ
原作:「ぼくは君たちを憎まないことにした」
出演:ピエール・ドゥラドンチャンプ、カメリア・ジョルダナ、アン・アゾレイ

2015年11月13日金曜日の朝。ジャーナリストのアントワーヌ・レリスは息子のメルヴィルと一緒に、メイクの仕事に急ぐ妻のエレーヌを送り出した。前から予約して楽しみにしていた12月のコルシカ島への旅行も、メイクの仕事が入っていけないという仕事熱心な妻。
夜、サッカー場のほか数か所でテロとのニュース。妻の実家から「エレーヌは家にいる?」と電話が入る。エレーヌは、パリ中心部にあるコンサートホール、バタクランでのライブに行くと言っていた。ライブ中に3人の男たちが1,500人の観客に銃を乱射したと知る。エレーヌの遺体と対面し茫然とするアントワーヌ。ママの姿を探す幼い息子。妻に代わって食事の用意をし、絵本を読み聞かせる。誰とも共有できない悲しみ。アントワーヌは、妻の命を奪ったテロリストに宛てて手紙を書く。「君たちに憎しみは送らない。憎しみに怒りでこたえたら屈することになる・・・」 投稿したメッセージは、一晩で20万人以上がシェアし、新聞の一面を飾った・・・

メトロの中で中東系の青年たちを見かけると心穏やかでないアントワーヌ。妻が突然いなくなったことを受け入れられないでいる彼に、墓地はどこにする? 棺はどれに?と、現実が襲ってきます。妻に着せる服を選び、埋葬を終え、家に帰ると、息子はまだママを探している・・・ 3本の歯ブラシさえ空しく感じてしまいます。妻の命を奪ったテロ犯への憎しみを封印することは容易なことではないはずですが、皆に向けて宣言することで乗り越えようとするアントワーヌの気持ちがひしひしと伝わってきます。
テロや戦争で肉親を亡くした人たちの、どこに怒りをぶつけていいかわからない思い。けれども怒りを憎しみに変えたら、さらなる戦争を産むことを肝に銘じないといけないですね。
例えば、今のイスラエルとハマスとの戦争。イスラエルの人たちは、ハマスがテロリストだから攻撃していいと思い込まされているという話を聞きました。そも、なぜハマスが過激な行動に走るのかに思いを馳せてほしいと思います。ホロコーストで生き延びたユダヤ人たちが、パレスチナの人たちを追い出して住みついたことを思い出してほしいです。しかも、ホロコーストの加害者はパレスチナ人ではありません。
本作のパリの同時多発テロもしかり。過激な行動に出た背景があるはずです。お互い、恨みを持つに至った歴史は過去のものとして赦さないと、いつまでも戦いは終わりません。アントワーヌの言葉は、そのことを教えてくれます。皆が同じ気持ちになれば戦争は終わるはず。ほんとに悲しい。(咲)


パパと小さな息子が残されたら、日本ならすぐ祖父母が手伝いに飛んできそう。よくパパ一人で、とまず思いました。このメルヴィル役の子役さんが自然で、パパ、ママどちらかの実子では?と思ったほどです。彼にはきちんと演出家がついていて演技を引き出したのだそうで、ほんとに驚きました。
憎んだり怒りをぶつけたりすると、感情を吐き出せて楽です。それをしなかったから苦しむのですが、赦しはそれからのアントワーヌの心身の支えとなったはずです。同じ思いの方々が世界中にたくさんいることでしょう。のんきに暮らしていてわかった風な口をきくな、と言われそうですが。(白)


2022年/ドイツ・フランス・ベルギー/フランス語/102分/シネスコ/5.1ch
日本語字幕:横井和子
提供:ニューセレクト  配給:アルバトロス・フィルム
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ
公式サイト:https://nikumanai.com/
★2023年11月10日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国公開

posted by sakiko at 03:10| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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