2023年09月03日

6月0日 アイヒマンが処刑された日    原題:JUNE ZERO

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(C)THE OVEN FILM PRODUCTION LIMITED PARTERNSHIP


監督:ジェイク・パルトロウ
脚本:トム・ショヴァル、ジェイク・パルトロウ
出演:ノアム・オヴァディア、 ツァヒ・グラッド 、ヨアブ・レビ、トム・ハジ、アミ・スモラチク、ジョイ・リーガー

第二次世界大戦下、ユダヤ人を強制収容所に送り込み抹殺する計画立案者だったナチス・ドイツのアドルフ・アイヒマン。戦争捕虜収容所から脱走しアルゼンチンに潜伏していたが、1960年にイスラエル秘密諜報機関(モサド)によりイスラエルに極秘連行された。裁判の末、61年12月に死刑判決が下り、翌年5月31日から6月1日の真夜中《イスラエル国家が死刑を行使する唯一の時間》の“6月0日”、絞首刑に処された。遺体は火葬され、遺灰はイスラエル海域外に撒かれた。
実は、人口の9割がユダヤ教徒とイスラム教徒であるイスラエルでは律法により火葬が禁止されており、火葬設備が存在しない。では、誰が、どうやってアイヒマンの遺体を火葬したのか? 本作は、遺体処理の極秘プロジェクトに巻き込まれた人々の物語。

リビアから一家で移民してきたダヴィッド少年。父に連れられて町はずれの鉄工所へ向かう。ゼブコ社長が炉の中に入って掃除ができる小柄な少年を探していたのだ。折しも、ゼブコの戦友で刑務官のハイムが、アウシュビッツで使われたトプフ商会の小型焼却炉の設計図片手に、極秘プロジェクトを持ち込んでくる。燃やすのはアイヒマンだという・・・

火葬を禁止された国で、火葬に処したという話にゾクゾク。そして、イスラエル国家が1948年に建国されてから、10年ちょっと過ぎた時代の状況に興味津々でした。
ダヴィッドの家族は、1年前にリビアから移民してきたユダヤ人。父親はアラビア語で息子たちに話しかけていて、ヘブライ語はたどたどしく、ダヴィッドが手助けしています。父親は戦争中、リビアでナチスの収容所に入れられています。
ダヴィッドがゼブコ社長に連れられてイエメン人の工場に行きますが、イスラエル建国後にイエメンから移民してきた人たちでしょう。
アイヒマンの看守は、モロッコ出身のユダヤ人。「ホロコーストを経験している東欧系のユダヤ人は、感情的になるからナチスの警備には当たらせない。中東と北アフリカ出身ならOK」と語っています。
イスラエル建国後、各地のユダヤ人が移民しましたが、その中には、「イスラエルはいいところだ」と先に移民した人から誘われて来たものの、中東・北アフリカ出身のユダヤ人は、ヨーロッパ系のユダヤ人から下に見られる傾向があって、騙されたと感じた人も多いようです。(北朝鮮への帰国事業に似ている??)
アイヒマンの髪を整えにきた床屋は、イスラエル中央部の町クファル・サバ生まれのトルコ人。3世代目なので、オスマン帝国時代から住むトルコ人。
アイヒマンの犯罪を立証するチームに参加していたポーランド出身のミハは、アイヒマンの裁判後、初めて自身が暮らしていたゲットーを訪れます。ゲットーツアーのトライアルで、参加者たちに聖書を燃やすことが仕事だったと苦し気に語ります。一方で、自分たちの苦しみを忘れないことを強制してほしくないという思いもよぎるのです。
アイヒマンの処刑を通じて、様々な立場の人たちの思いを考えさせられました。(咲)


2022年/イスラエル・アメリカ/ヘブライ語/105分/ヨーロピアン・ビスタ/カラー
日本語字幕:齋藤敦子
配給:東京テアトル
宣伝:ロングライド
公式サイト:http://rokugatsuzeronichi.com/
★2023年9月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

posted by sakiko at 11:34| Comment(0) | イスラエル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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