2023年08月27日

バカ塗りの娘

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監督:鶴岡慧子
原作:髙森美由紀「ジャパン・ディグニティ」
脚本:鶴岡慧子 小嶋健作
撮影:髙橋航
照明:秋山恵二郎
録音:髙田伸也
美術:春日日向子
音楽:中野弘基
出演:堀田真由(青木美也子)、小林薫(青木清史郎)、坂東龍汰(青木ユウ)、宮田俊哉(鈴木尚人)、木野花(吉田のばっちゃ)、坂本長利(青木清治)

青森県弘前市。青木美也子は高校卒業後、特にやりたいこともなくスーパーで働きながら、津軽塗職人の父清史郎の仕事を手伝っている。祖父は文部科学大臣賞を受賞したこともある津軽塗の名匠だったが、父は注文が減っていくばかりの現状に頭を悩ませている。母は仕事優先の父に愛想をつかして出て行ってしまった。兄のユウは家業を継ぐのを嫌い美容師の道に進み、家族はバラバラになった。
寡黙な父と二人きりの作業場は、仕事の音だけが響く。人付き合いが苦手な美也子は、こうやって作業するのが性に合っている。しかし、津軽塗の仕事をしたい、とはっきり口に出せずにいた。

好評だった「ジャパン・ディグニティ」を原作に、津軽塗の伝統を守り続け、つないでいくことの難しさや喜び職人の家族を芯に描いています。生まれて初めての作業をしながら、津軽弁で話すというチャレンジをした堀田真由さんと小林薫さん、不器用な父と引っ込み思案な娘のやりとりがほほえましいです。表に出ることばの何倍もが胸の中にあるのに、うまく話せないもどかしさに共感します。我慢も限界、と出て行く母、わが道を行く兄が2人の反対側に配されています。
青森には母方の親戚がいて、何十年来の友人も住んでいます。言葉にも津軽塗にもなじみと親しみがあるので、作業の様子を興味津々で見守りました。何度も漆を塗り重ねては研ぎ、を繰り返す津軽塗は何色も重ねられた色が模様になって浮き出て美しく、しかも堅牢です。我が家にもいつから使い始めたか定かでない箸が残っています。手間暇かかるが故に高価ですが、この作業を目にすると無理もない値段だと納得します。安価なものを使い捨てるのではなく、人の手でこんな風に作られたものを大切に使い続けたいものです。
メイキング映像で、鶴岡監督は「漆アレルギーだとこの映画に携わって判明した」と知りました。以後完全防備で撮影に臨んで作り上げた監督、ご苦労さまでした。(白)


2022年/日本/カラー/シネスコ/118分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会
https://happinet-phantom.com/bakanuri-movie/
★2023年9月1日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 16:14| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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