2023年07月29日

邯鄲の夢 三重芝居と四人の役者

kantanno.jpg

監督・脚本:三天屋多嘉雄(みそらやたかお)
舞台監修:沢竜二
撮影:川越康平
出演:須賀貴匡(沢田冴之介)、松林慎司(三津葉銀次)、三天屋多嘉雄(万家徳治朗)、沢竜二(沢田座長)

脚本家の沢田冴之介は仕事に行き詰まり、意に沿わない直しを強いられて鬱積した日々を過ごしていた。
冴之介が書きたいのはとある大衆演劇一座の後継者争いの話。座長の息子だった冴之介は、父親の後を継いで自分が座長になりたい。弟子の三津葉銀次は、実力も人気もある座員で、冴之介に対して強い嫉妬心を抱いている。冴之介は銀次を尊敬してはいたが、同時に妬ましく思っていた。
ある日、真正女澤正劇(しんしょうおんなさわしょうげき)の稽古中、銀次の刃先が冴之介の片目を突いてしまう。冴之介は役者を続けられなくなり、銀次は一座から出ざるをえなくなった。2

監督・脚本・主演の三天屋多嘉雄さんは、沢竜二さんの最後のお弟子さん。伝統芸能を絶やすまいと、家族のような劇団のつながり、師匠と弟子の愛情に、今どきの事情もからめて1本に作り上げました。映画の中では、一番よくしゃべる元気な徳治朗役です。
元となったのは「真正女澤正劇」という人情剣劇。ふだん目にする大衆演劇のようにわかりやすいかと言えば、過去と現在、夢と現実が入り組んでいます。三重芝居というそうで、これを舞台にかけたときはどうなるのでしょう?
「女澤正」とは、沢竜二さんのお母様酒井マサ子さんが、新国劇の人気役者・澤田正二郎さんからいただいた別名です。沢竜二さんは楽屋で生まれて、4歳からお母様と一緒に舞台に立っていました。87歳になられたそうですが、しゃんとして声もよく通ります。以前時代劇に出演されていたのを拝見したことがありますが、舞台での剣さばきを観たのは初めて。いつか沢一門の大衆演劇をちゃんと通しで観たいものです。(白)


KantannoyumeKokaikinen1.jpg
初日舞台挨拶(オフィシャル画像)

三天屋監督コメント
「この映画で少しでも前向きになれたり、ちょっとでも元気になってもらえたらいいなと思っております。もし夢が壊れたら、もし夢が消えたら、そのときはもう一度、夢を見ればいい。命はひとつでおしまいですが、夢が消えても死にません。
わたしたちのまわりには必ずどこかに夢は落っこちているものです。わたしはその夢を、明日もあさっても、これからもずっと拾い続けていきたい。そう思っています。沢先生にそう教わりました。くよくよするのは最後。ガックリするのも最後。お互いに夢を拾って生きていきましょう!」

「邯鄲の夢」(かんたんのゆめ)
中国の物語「枕中記」の中の話。悩める青年盧生(ろせい)が、趙(ちょう)の都邯鄲(かんたん)で道士 呂翁と出会い、呂翁が持っていた夢が叶うという不思議な枕を借りてうたた寝をした。その間に50余年の栄華を極めた一生の夢を見る。長い間眠ったと思っていたが、寝る前に鍋にかけたお粥がまだ煮えていないほどの短い時間であった。「一炊の夢」ともいう。人の世の栄枯盛衰はそれほど儚いものであるということ。能の「邯鄲」もこれから。

2022年/日本/カラー/130分
配給:ギグリーボックス
(C)明治産業・グッドラックスリー
https://kantannoyume-movie.com/
★2023年7月28日(金)よりTOHO シネマズ 日本橋、大阪ステーションシティシネマにて公開中

posted by shiraishi at 23:16| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください