2023年07月09日
丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部
監督:撮影:河邑厚徳
ナレーション:ジョン・カビラ
朗読:山根基世
出演:新垣成世 平仲稚菜 島袋由美子 平良修 平良悦美 真喜志好一 佐喜眞道夫 山城博明 吉川嘉勝 丸木ひさ子 岡村幸宣 知花昌一 山内徳信 金城実 本橋成一 石川文洋
絵の中で 戦死者はかたりつづける
藝術は 記憶を未来へ手渡していく
ノーベル平和賞候補になり、朝日賞や埼玉県民栄誉賞などを受賞した水墨画で風景画家の丸木位里(1901‐1995)と人間画家の丸木俊(1912‐2000)夫妻。二人は、「原爆の図」「南京大虐殺」「アウシュビッツ」と40年に渡り、戦後一貫して戦争の地獄図絵を描いてきた。
1945年の沖縄戦の写真は、アメリカ側が撮影した写真しか存在していない。二人は「日本人側から見た記憶を残しておかなければいけない」と、1982年から1987年に沖縄戦を取材し、「沖縄戦の図」14部(「久米島の虐殺1、2」「暁の実弾射撃」「亀甲墓」「喜屋武岬」「ひめゆりの塔」「沖縄戦―自然壕」「集団自決」「沖縄戦の図」「ガマ」「沖縄戦―きやん岬」「チビチリガマ」「シムクガマ」「残波大獅子」)を制作した。今までは二人で進めてきた共同制作だが、沖縄に来て、体験者の証言を聞き、生々しく残る戦地を歩き、村人も参加する開かれたものになっていった。完成した「沖縄戦の図」は、平和を願い描いた二人の作品群の中でも、余すことなく戦争の悪を描き、日本軍の愚かさを伝えてその記憶を未来へ継承しようとする怒り溢れる作品となった。
本ドキュメンタリーは、個々の絵についての説明や批評はあった「沖縄戦の図」全14部を全て紹介する初めての試みである。二人が最晩年、6年かけて取り組んだ「沖縄戦の図」の制作の軌跡を辿ることで、「反戦反核の画家」と一言では語り切れない、二人の命に対する眼差しを丁寧に紹介していく。
同時に、二人が証言を聞いた人々にインタビューすることで、二人が「戦争悪が凝縮している」と驚いた、家族同士が手をかけた集団自決など、「空爆」や「空襲」とは全く違う様相を見せた「地上戦」である沖縄戦の色々な側面を見せる。存命の直接戦争を語れる体験者が数少なくなっている中、貴重な映像資料となっている。
「沖縄戦の図」全作品は、米軍から「美術館建設のためなら」と先祖の土地が返還された特別な土地に建てられた佐喜眞美術館に収められている。「命こそ宝」という概念コンセプトが来場者に伝わる空間とするための工夫も紹介されている。
また、なかなか戦争体験を語ろうとしない人が多い中、沖縄戦については沖縄民謡の歌詞としても残っている。若い沖縄民謡唄者の新垣成世と同級生で平和ガイドでもある平仲稚菜が「沖縄戦の図」などから戦争について学び、民謡でも戦争体験を継承していく姿も織り込まれている。
リンダ・ホーグランド監督の「『ANPO』安保をアートで語る」(2010)という作品で、普天間基地を俯瞰できるというこの佐喜眞美術館のことを知り、いつか行ってみたいと思っていたのですが、ここに丸木位里・俊さんの「沖縄戦の図」というのがあるのは知りませんでした。あるいはこの作品でもこの絵のことを言及していたのに覚えていなかったのか…。この『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部』を観て、やはりこの佐喜眞美術館に行ってみたいと思いました。
この作品で「沖縄戦の図」は6年かけて書いたということを知り、二人の共同作業の様子も見ることができました。モデルになった人も含め、たくさんの沖縄の人の協力でできたということや、二人の音声もいっぱい出て来て、この絵に対する思いが伝わってきました。久米島の虐殺のこともこの作品で知りました。そしてなによりも、丸木伊里さんと俊さんの絵のために、この美術館を作った佐喜眞道夫さんの話に感動しました。
石川文洋さん、本橋成一さん、知花昌一さん、金城実さんなどは、沖縄を描いたドキュメンタリーには欠かせない人たちですが、さらに若い民謡歌手の新垣成世さんと平和ガイドの平仲稚菜さんの二人を登場させるというかたちで、「沖縄戦の継承」という課題にも踏み込んでいたのが良かったと思います。1987年の「沖縄国体日の丸焼却事件」当事者の知花昌一さんの「日の丸国旗が好きだった」という話にもびっくりしました。それがあってのあの事件だったのだなと思いました。
丸木位里さん、俊さん夫妻の絵というと、「原爆の図」、「アウシュビッツ」、「南京大虐殺」などの絵が有名ですが、東松山にある丸木美術館に30年くらい前に行った時に見たのは「原爆の図」だったと思います。
実は、お二人の描く絵は不気味で怖いから直視したくはないのですが、でも、この現実を直視するため、怖くてもちゃんと見なくてはと思います。
佐喜眞美術館には、沖縄の学生だけでなく、本州からの修学旅行などで訪れる学生もるようです。この絵を見て、沖縄戦のことを思う若い人たが増えたら、この「沖縄戦の図」の意味は大きいと思います(暁)。
『丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部』河邑厚徳監督インタビュー
☆佐喜眞美術館
映画公開に合わせ、沖縄戦の図14作品を一挙公開中
2023年5月26日(金)〜2024年1月29日(月)
*14作品すべてが展示されるのは2年ぶりです。
https://sakima.jp/
2023年 /日本/カラー/16:9/ステレオ/88分
配給宣伝:海燕社、アルミード
資料提供:沖縄県公文書館、ひめゆり平和祈念資料館、久米島博物館、読谷村教育委員会、原爆の図 丸木美術館、琉球新報社
映像提供:NHK 1984 年「日曜美術館 戦世の画譜」、シグロ/パラブラ 1983 年「水俣の図 物語」1987 年「ゆんたんざ 沖縄」
公式サイト:https://okinawasennozu.com/
公式ツイッター: @OKNWsen14movie
★2023年7月15日(土)〜7月28日(金)ポレポレ東中野
8月1日(火)〜8月6日(日)東京都写真美術館ホールほか全国順次公開
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください