2023年06月28日

1秒先の彼

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監督:山下敦弘
原作:チェン・ユーシュン
脚本:宮藤官九郎
撮影:鎌苅洋一
音楽:関口シンゴ
主題歌:幾田りら「P.S.」
出演:岡田将生(ハジメ)、清原果耶(レイカ)、荒川良々、羽野晶紀、加藤雅也、福室莉音、片山友希、しみけん、笑福亭笑瓶、桜子

京都の中賀茂郵便局に勤めるハジメは子どものころから、何をするにもほかの人より1秒早い。かけっこではいつもフライング。記念写真はシャッターが下りたとき、必ず目をつむってしまっている。高卒後、12年間郵便配達員だったのに今窓口勤務なのは、人より早いがゆえの信号無視とスピード違反でついに免停になってしまったからだ。
毎日のようにハジメのいる窓口で切手を買うレイカは、なぜかいつでも人よりワンテンポ遅い。そのせいか学生生活もすでに7回生。アルバイトで学費を稼ぎ、写真部の部室が家の貧乏生活をしている。こんな真逆な2人があることで交差する。それは、ハジメの初デートの日が消えたことから発覚した。

台湾のヒット作『1秒先の彼女』を男女入れ替えてリメイクしたのが本作。6月23日、主演の岡田将生、山下敦弘監督、脚本の宮藤官九郎が訪台し、台北映画祭でもお披露目が済みました。肝になるところは大きく変えず、小ネタを仕込んだ官九郎脚本となっています。
岡田将生は山下監督とは『天然コケッコー』(2007年公開)以来16年ぶりのタッグとなります。当時はまだ高校生「こうやって大人になってから、また一緒に映画が作れることは感慨深い」と語り、初心を思い出す良い機会になったようです。同年代のスターが群雄割拠というほど大勢いる芸能界で、今もテレビ、映画で活躍しているのは大変なことです。この作品では饒舌なハジメを演じて賑やかですが、どんな役どころもできる役者さんになってきたなぁと、遠くから観ていても感慨深いものがあります。(白)


チェン・ユーシュン監督の名作『1秒先の彼女』のリメイクということで、つい比較しながら観てしまいました。男女を入れ替えたというアイディアや、京都の郵便局を舞台にしたところなど、良い意味で予想を裏切られました。中でも、時間が止まった時に平安神宮前の道から行く、レイカの生まれ育った伊根町の舟屋が並ぶ海沿いの風情ある街並みや、天橋立の景観が素晴らしいです。
それにしても、ハジメとバスの運転手さん以外の人たちが硬直してしまった場面は、どのようにして撮影したのでしょう・・・ (咲)


陳玉勲(チェン・ユィシュン)監督作品のユーモア感、ポップなのにノスタルジー感がある世界、そしてなによりも不器用に生きている人への優しいまなざしが大好きな私は、元の『1秒先の彼女(消失的情人節)』を、日本版ではどのようにリメイクしているのかとても興味を持っていました。男女の設定を入れ替え、京都(かも川べり、天橋立、伊根含む)を舞台にしたところなど、とても良かったと思います。原作を踏襲した上でのひねりもユニークで、ノスタルジーという部分では、「女ひとり」や「なのに貴方は京都へゆくの」などの歌が、リアルタイムでヒットしたのを知っている世代の私にとってはとてもツボでした。それと、今年2月に亡くなった笑福亭笑瓶さんが本人役でラジオ番組DJで出て来たり、写真館の館主で出てきたので、コミカルな作品なのにちょっとしんみりしました。
脚本の宮藤官九郎さんは、「既存作品のリメイクは初めてでしたが、オリジナルのファニーで可愛らしい印象は残しつつ、山下監督が撮るんだからと欲張って、人生の苦み、もどかしさ、おかしみなどのエッセンスを盛り込みいい具合に変換できたと思います」と語っていますが、最強の監督と脚本コンビだったと思います(暁)。


2023年/日本/カラー/シネスコ/119分
配給:ビターズ・エンド
https://bitters.co.jp/ichi-kare/
★2023年7月7日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 22:14| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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