2023年06月18日

遺灰は語る  原題:Leonora addio

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(C)Umberto Montiroli

監督・脚本:パオロ・タヴィアーニ
出演:ファブリツィオ・フェッラカーネ、マッテオ・ピッティルーティ、ロベルト・エルリツカ(声)

1936年、ノーベル文学賞受賞作家のピランデッロが亡くなり、「遺灰は故郷シチリアに」と遺言を残すが、時の独裁者ムッソリーニは、その遺灰を自分の名誉に利用しようとローマに留め置いた。戦後、ようやく遺灰は故郷シチリアに帰ることになり、シチリアのアグリジェント市から特使がやって来る。遺灰をギリシア式の壺に移し、木箱に入れしっかり保護する。米軍の飛行機に乗せようとするが、遺灰との同乗は不吉だと拒否され、列車で運ぶことにする・・・

ギリシアの壺に入れられた遺灰が巡る運命はモノクロで描かれ、エピローグの短編「釘」の部分はカラー。味わい深く、ほのかなユーモアもある1作。

これまで兄ヴィットリオとともに〈タヴィアーニ兄弟〉として、『父/パードレ・パドローネ』(1977年)『カオス・シチリア物語』(1984年)など数々の名作を製作。2018年4月、兄ヴィットリオが88歳で死去。本作が、現在91歳の弟パオロが一人で発表した初めての作品。実は、『カオス・シチリア物語』を撮った折、最後に「ピランデッロの灰」のエピソードを入れたかったけれど予算が足りず諦めたとのこと。冒頭に「ヴィットリオに捧ぐ」と掲げられています。
モノクロームで遺灰の旅がしっとりと描かれたあとに、鮮やかなカラーで描かれる短編「釘」は、事情を知らなかったので、ちょっと唐突な感じがしました。ピランデッロが死の20日前に書いた小説をもとに脚色したもの。シチリアからニューヨークのブルックリンに移民した少年が、ある日拾った釘で少女を殺してしまいます。警察の取り調べに「それが定めだから」としか言わない少年。一生、少女のことを忘れないという少年。映画は、少女のお墓の前に佇む白髪の男の姿で終わります。ピランデッロは、どんな思いでこの物語を綴ったのでしょうか・・・ そして、パオロ・タヴィアーニ監督の作家への思いは? (咲)



パオロ・タヴィアーニ Paolo Taviani 
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2023年5月2日、イタリア映画祭のオープニング作品として『遺灰は語る』が上映され、上映後にオンラインでパオロ・タヴィアーニ監督のトークが予定されていて、楽しみに会場に駆け付けたのですが、風邪を引かれ体調がすぐれないとのことで直前に中止になりました。
公式サイトの監督インタビューを、ぜひお読みください。
https://moviola.jp/ihai/#director_wrapper

◆公開初日にパオロ・タヴィアーニ監督オンラインQ&Aが行われます。
日時:6月23日(金)18:30の回上映後
会場:新宿武蔵野館
座席のオンライン予約
https://www1.musashino-ticket.jp/shinjuku/schedule/index.php


2022年/イタリア/90分/モノクロ&カラー/PG12
字幕:磯尚太郎、字幕監修:関口英子
配給:ムヴィオラ
後援:イタリア大使館 特別協力:イタリア文化会館
公式サイト:https://moviola.jp/ihai/
★2023年6月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開



posted by sakiko at 18:02| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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