2023年05月28日
ルナ・パパ 4Kレストア版 原題:Luna Papa
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ
出演:チュルパン・ハマートヴァ、モーリッツ・ブライプトロイ、アト・ムハメドシャノフ
湖の畔にあるファル・ホール。
母のお墓に祈る女優志望の17歳の娘マムラカット。
ある月夜、暗闇の草むらで、27歳の役者と名乗る男と坂を転げ落ち、はずみで犯され、子を宿してしまう。
2ヵ月後、中絶しようと町の病院に行くが、手術直前に医師が流れ弾に当たって死んでしまう。父に妊娠したことを打ち明け、兄ナスレディンと3人で相手の男を探す旅に出る。わかっているのは役者ということと声だけ、各地の劇場を回るが見つからない。兄と父が、有名な歌手を相手の男だと捕まえてくる始末。やがて、アリクというブハラ出身の医師と恋に落ち、パパになってくれるという。マムラカットとアリクは、湖に浮かんだ船の上で結婚式を挙げる・・・
「声」だけを頼りに、お腹の子の父親を捜す旅。思いもかけない結末に、あんぐり~ 物語は、お腹の中の子が語る形で進みます。 冒頭に掲げられた「母たちに捧ぐ」の言葉がずっしり響きます。
兄ナスレディンは、飛行機や車の真似をして、少し頭がおかしいのですが、アフガニスタンでの戦争に行った後遺症。 アリクがプロポーズのために薔薇の花を取ろうとして感電する場面や、空から牛が落ちてくるなど、笑うに笑えない事故もあるのですが、それもファンタジーになっています。
ファル・ホールを地図で調べてみました。首都ドゥシャンベの南東、アフガニスタンの国境になっている湖の畔にある町。 映画の最後に撮影地として出てきた地名は、kairakum。 ドゥシャンベの北東にある湖の畔の町。ファル・ホールと湖の畔という点で同じです。
マムラカットたちは、相手の男を探して、サマルカンド、ブハラ、タシケントなどを回ったとありました。いずれもタジキスタンのお隣り、ウズベキスタンの町です。まだソ連だった時に、サマルカンドから、タジキスタンのペンジケントに行ったことがあります。ソ連崩壊後、中央アジア5か国は、それぞれ独立。タジキスタンの内戦時代(1992年~1997年)には、国境が閉鎖されたこともあると聞きます。本作が作られたのは内戦終了後。自由に行き来できるようになったのがわかります。
本作の中で、マムラカットがスイカの格好で踊る場面がキュートでした。タジキスタンもウズベキスタンも、スイカやメロンが美味しいところ。冒頭、空から映した山、川、町に旅心もそそられました。
本作も、ほかの3作品と同様、日本初公開時に観ているのですが、なんだか不思議な映画だったという印象しか残っていませんでした。こんな話だったのか・・・!!! (咲)
◆バフティヤル・フドイナザーロフ監督インタビューが、こちらで読めます。
https://crisscross.jp/html/a20hu005.htm#a
2000年5月 渋谷 (劇場初公開時のもの)
主人公の名前を「国家」「大地」を意味するマムラカットとした理由も、こちらでわかります。
1999年/ドイツ・オーストリア・日本合作/110分/カラー/1:1.66/ドルビーSRD
再発見!フドイナザーロフ ゆかいで切ない夢の旅
公式サイト https://khudojnazarov.com/
主催・配給:ユーロスペース、トレノバ
★2023年6月3日(土)よりユーロスペースほか全国順次開催
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