2023年05月28日
苦い涙 原題:Peter von Kant
監督・脚本:フランソワ・オゾン
*ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの名作『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』を自由に翻案
出演:ドゥニ・メノーシェ(『悪なき殺人』『ジュリアン』)、イザベル・アジャーニ、ハリル・ガルビア、ステファン・クレポン、ハンナ・シグラ、アマンテ・オーディアール
1972年、西ドイツのケルン。著名な映画監督ピーター・フォン・カントはオフィスを兼ねた瀟洒なアパルトマンで、同居する若い助手のカールをこき使いながら暮らしている。恋人フランツに捨てられ落ち込んでいたところへ、大女優で親友のシドニーが、俳優志望の美しい青年アミールを連れてやってくる。一目でアミールに心を奪われたピーターは、カメラテストを経て、俳優として育てようと同居させる。9ヵ月後、ピーターの公私にわたる努力によって、アミールは映画界の新星として注目を集めるようになるが・・・
オゾン監督が敬愛するドイツの監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが、1970年代西ドイツのアパルトマンを舞台にして描いた室内劇『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』を自由に翻案。女性同士の恋愛関係を男性同士に置き換え、ファッション・デザイナーだった主人公を映画監督に変え、さらにオゾン監督の美意識に基づいたアレンジを施したとのこと。元の作品を観ていないので、比較できないのですが、言葉はドイツ語とフランス語が混じり、愛に生きる人たちの姿からはフランスの香りが漂います。
偏執ともいえるピーターのアミールへの愛。破綻した前のフランツとの関係も、ピーターの偏愛がもたらしたものかと想像してしまいます。大柄なドゥニ・メノーシェ演じるピーターは強烈です。愛に生きる男を体現しています。美青年アミールを演じたハリル・ガルビアは、父親がチュニジア出身のダンサー。ピーターの愛を受け入れる振りをしながら、したたかに俳優の座を手にする様を魅力的に演じています。イザベル・アジャーニの美貌にも目を奪われましたが、本作でなんといっても印象に残ったのは、ステファン・クレポンが演じた助手のカール。ピーターからどんな命令をされても文句も言わずにこなし、アミールに言い寄るピーターのことも静かに見つめています。カールの複雑な思いが伝わる絶妙な演技でした。(咲)
2022年/フランス/フランス語・ドイツ語/スコープサイズ/5.1ch/85分
日本語字幕:手束紀子.
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/nigainamida/
★2023年6月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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