2023年05月27日
Rodeo ロデオ
監督・脚本:ローラ・キヴォロン
撮影:ラファエル・ヴェンデンブスッシュ
音楽:ケルマン・デユラン
出演:ジュリー・ルドリュー(ジュリア)、アントニア・ブレジ(オフェリー)、ヤニス・ラフキ(カイス)、コーディ・シュローダー(キリアン)、ルイ・ソットン(ベン)、ジュニア・コレイア(マネル)、ダブ・ンサマン(アブラ)
物語の主人公は、バイクにまたがるためにこの世に生を受けたジュリア。短気で独立心の強い彼女は、ある夏の日、技を操りながら公道を全速力で疾走する、”クロスビトゥーム”のバイカーたちに出会う。ある事件をきっかけに、彼らが組織する秘密結社の一員となった彼女は、男性的な集団のなかで、自身の存在を証明しようと努力する。しかし、彼らの要求は次第にエスカレートし、彼女は疑問を持ち始める。
バイクが好きで、疾走するために生まれてきたようなジュリア。だまし取ったバイクで機嫌よくかっ飛ばしていたら、”クロスビトゥーム”という暴走族に遭遇します。すっかり魅せられて仲間入りしますが、周りは男ばかり。ジュリアは女性としてではなく、技術と度胸のよさで居場所を作っていきます。いつも不機嫌そうなジュリアですが、バイクで走っているときだけは笑顔を見せます(ちょっと白川和子さん似)。
人気だというヤマハのオフロードバイクYZ450F は、新車なら100万円以上。重量も100㎏以上です。倒れたバイクを起こすこともできなそうな、細身のジュリアにまんまと乗り逃げされてしまったお金持ちが悔しそうでした。あ、これは監督が脚本に何年もかけたフィクションです。オーディションで発掘した俳優たちの演技が自然で、ドキュメンタリーにも見えてしまうくらい。
あれこれと指示を出すボスのドミノは、離れても家族に君臨し妻オフェリーと子どもを外にも出しません。バイク以外のエピソードは、ジュリアとオフェリーとのやりとりが唯一。オフェリーが夫の支配下に戻ってしまってジュリアが見せる表情をなんと解釈しよう。鮮烈なヒロインでした。(白)
2016年に製作した短編『ボルチモアから遠く離れて』で、ライダーたちの社会を描いた後、彼らのコミュニティの一員となったローラ・キヴォロン監督。バーヤという女性ライダーとの出会いが本作のきっかけとなったこと、その後、ジュリー・ルドリューとの出会いが主役ジュリアを生んだことなどが、公式サイトの監督インタビューに詳しく書かれています。
ローラ・キヴォロン監督は、ノンバイナリー(自分の性認識に男性か女性かという枠組みを当てはめない考え方)を公言。男性中心主義のコミュニテイの中で、自分の居場所を見出していくヒロインの姿を鮮やかに描き出しています。
夫ドミノが収監中のオフェリーを演じたアントニア・ブレジが、本作の共同脚本を務めているのですが、敢えて、オフェリーが夫に従い、実家のコルシカに帰るのも控えるというキャラクターにしたのが気になります。いまだに、そのような妻が多いことへの警鐘でしょうか。(咲)
ローラ・キヴォロン監督の長編デビュー作。
2022年の第75回カンヌ国際映画祭ある視点部門で「クー・ド・クール・デュ・ジュリー(審査員の心を射抜いた)賞」を受賞。
2022年/フランス/カラー/シネスコ/105分
配給:リアリーライクフィルムズ、MAP
(C) CG CINEMA/ ReallyLikeFilms
https://www.reallylikefilms.com/rodeo
★2023年6月2日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ロードショー
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