2023年05月21日

ハンガリーの女性監督 メーサーロシュ・マールタ監督特集上映 

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メーサーロシュ・マールタ監督特集上映
女性たちのささやかな革命


1975年製作の『アダプション/ある母と娘の記録』が、第25回ベルリン国際映画祭においてハンガリーの監督としても女性監督としても史上初の金熊賞に輝いたメーサーロシュ・マールタ監督。
女性の直面する問題を描き、その後もカンヌをはじめ数々の国際映画祭で受賞を果たしています。日本では上映の機会に恵まれなかった彼女の珠玉の作品群の中から、5本が日本初公開されます。

『ドント・クライ プリティ・ガールズ!』 1970年
『アダプション/ある母と娘の記録』 1975年
『ナイン・マンス』 1976年
『マリとユリ』 1977年
『ふたりの女、ひとつの宿命』 1980年

後援 駐日ハンガリー大使館/リスト・ハンガリー文化センター 配給:東映ビデオ
(C)National Film Institute Hungary Film Archive
公式サイト:https://meszarosmarta-feature.com/
★2023年5月26日(金) 新宿シネマカリテほか全国にて順次公開


メーサーロシュ・マールタ Mészáros Márta(1931年9月19日~  )
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1931年、ハンガリーの首都ブダペシュト生まれ。1936年、コミュニストで彫刻家の父と母と共にキルギスへ逃れる。父はスターリンの粛清の犠牲となり、その後、母は出産で命を落とした。ソヴィエトの孤児院に引き取られ、戦後ハンガリーへ帰郷。1957年にモスクワの映画大学で学び、ハンガリーに戻って活動を開始。1968年から長編映画を撮り始める。残酷な社会のなかで日々決断を迫られる女性たちの姿を描きながら、ファシズムの凄惨な記憶や、東欧革命の前兆であるハンガリー事件の軌跡など、そのまなざしは暴力と化す社会の相貌をも見逃さない。
最新作は2017年の『Aurora Borealis: Northern Light』。


『ドント・クライ プリティ・ガールズ!』 原題:Szép lányok ne sírjatok 英題:Don’t Cry, Pretty Girls! 
1970年/モノクロ/85分
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工場で働くユリは、町の不良と婚約しているが、あるミュージシャンと恋に落ちてしまう。ギグを開く彼と共に小旅行に出るが、婚約者とその不良仲間たちが執拗に追いかけてくる・・・
ビートの効いた音楽と共にユリの揺れ動く心が綴られる。閉塞的で家父長的な社会からの逃避行。

自転車で通勤してくる労働者階級の若者たちの姿が生き生きと描かれた作品。ユリが、工場勤めの現実から逃避するように、ミュージシャンに惹かれていく様が初々しい。
当時は社会主義国だったハンガリーで、息詰まるような閉塞的な社会を吹き飛ばさんばかりに西側の音楽やライフスタイルに憧れる人たちの姿が描かれていて、痛々しい思いもしました。(咲)



『アダプション/ある母と娘の記録』原題:Örökbefogadás 英題:Adoption 
1975年/モノクロ/87分
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木工工場で働く43歳の未亡人カタ。同僚の既婚者と5年にわたる不倫関係。子どもが欲しいと願うが相手は責任持てないとつれない。ある日、工場見学に来た近くの寄宿学校の17歳のアンナから、彼と会うために部屋を貸してほしいと頼まれる。それを契機に、アンナと母娘のような、年の離れた友達のような奇妙な友情関係を育んでいく・・・

健康診断でまだ子どもが産めると確認したカタが相手に迫って拒否された時に、ちょうど知り合ったアンナをまるで娘のように思って関わっていくようになります。アンナは親から見捨てられた境遇。カタを演じたべレク・カティが、静かな眼差しでアンナを思う気持ちを表現しています。カタにとって安らぎを与えてくれる存在があれば、面倒な男などいらないのだと思わせてくれました。
とはいえ、子どもを欲しいと思ったことのない私には、わからない感情。世の中には夫はいらないけど、子どもは欲しいという人もいるので、カタはそんな思いなのかも。(咲)



『ナイン・マンス』原題:Kilenc hónap 英題:Nine Months 
1976年/カラー/90分 
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ユリは鋳物工場で働くことになるが、面接を担当したヤーノシュから食事に誘われ、いきなり結婚を申し込まれる。ユリには妻子ある大学教授との間に息子がいて、実家の母に預けている。息子や教授とは時々会う良好な関係。それを知っても、家を用意するからと結婚を迫るヤーノシュ・・・

ユリは働きながら農学を学んでいて、さらなる飛躍を考えているのに、ヤーノシュは結婚したら働くことも勉強も不要だと言い放つのです。息子がいることは隠しておいてほしいと言われるのですが、ユリは結婚直前にヤーノシュの家族にぶちまけます。結果、破談になるのですが、妊娠が判明。ヤーノシュは中絶しろというのですが、9か月後・・・という物語。
ユリは農学を修得し、教授の紹介した職に就きます。女性の自立を描いた痛快な作品。旧態依然な男との対比が強烈でした。(咲)



『マリとユリ』 原題:Ők ketten 英題:The Two of Them
1977年/カラー/92分  
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マリの夫は偏狭な男で、ユリの夫はアルコールに依存している。マリとユリは、世代は離れているが、いずれも夫と辛い生活を送っていることを知り親しくなり、慰めあうようになる。やがて、お互いの葛藤を知った二人は連帯し、現状打破する決断をする・・・

家父長制が残る1970年代を舞台にした物語ですが、今も男性優位の風潮はあまり変わっていないような気がします。かつてに比べれば、一緒に暮らす価値のない男とは、さっさと決別でしょうか。 男性に依存しない人生への応援歌ともいえる物語。(咲)


『ふたりの女、ひとつの宿命』原題:Örökség 英題:The Heiresses 
1980年/カラー/109分 
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1936年、ユダヤ人のイレーンは、裕福な家の一人娘スィルヴィアとカフェで出会う。スィルヴィアは父から結婚を機に大邸宅を買ってもらい、生まれてくる子に莫大な財産の相続も約束されているが、不妊に悩んでいた。イレーンに夫アーコシュとの間で子供を作ってほしいと頼む。やがてイレーンは妊娠する。アーコシュは知人たちにイレーンを妻、スィルヴィアを義姉と紹介する。
国家社会主義に批判的なアーコシュは、祖母マリアがユダヤ人だと噂される。出生証明を見せて皆に謝罪してもらう。イレーンを伴った宴席で、ユダヤ憎しの話題になる。アーコシュに自分はユダヤだと打ち明けるイレーン。「知っていた」と動揺しない。
やがて息子が生まれ、スィルヴィアに引き渡す。「我が子」との別れに涙するイレーン。
1944年。各地でユダヤ人が連行される。アーコシュは妻から身分証を奪い取ってイレーンに渡す・・・

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イレーンを演じたイザベル・ユペールが初々しくて可憐。裕福な娘スィルヴィアを演じたモノリ・リリは、『ナイン・マンス』では労働者で未婚の母。どちらもちゃんとそれらしく見えて素晴らしいです。
ユダヤ女性から生まれた子は、ユダヤ。アーコシュは、愛するイレーンだけでなく、ユダヤ人である息子も助けようとした次第。それにしても、本来の妻であるスィルヴィアへの仕打ちに唖然! (咲)



posted by sakiko at 16:36| Comment(0) | ハンガリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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