監督:成島出
原作:門井慶喜
脚本:坂口理子
撮影:相馬大輔
音楽:海田庄吾
主題歌:いきものがかり「STAR}
出演:役所広司(宮沢政次郎)、菅田将暉(宮沢賢治)、森七菜(宮沢トシ)、豊田裕大(宮沢清六)、坂井真紀(宮沢イチ)、田中泯(宮沢喜助)、池谷のぶえ、水澤紳吾、益岡徹
跡取りの賢治が生まれて大喜びの宮沢家。家業の質屋を継がせようと大事に育てた息子は、質屋を弱い者いじめだと嫌い、農業や人造宝石や宗教にのめりこむ。愛するが故にすっかり甘やかしてしまった両親は、思いつきをすぐに実行する息子に振り回されてばかり。
妹のトシが賢治の一番の理解者だった。聡明なトシは女学校の教師になり、夢見がちな賢治に物語を書くように勧める。結核に倒れた最愛の妹のため、賢治は次々と物語を生み出しトシを喜ばせたのだが。
若干37歳で亡くなってしまった宮沢賢治。帽子とコート姿で物思いにふけりながら歩く姿が浮かびます。門井慶喜氏同名の原作は、これまでのイメージとは大きく違う賢治を生き生きと描いて、第158回直木賞を受賞しています。主人公は賢治よりも、彼を愛し支え続けた家族のほうです。賢治がなぜあんなにも美しい物語を書きあげられたのか、その秘密がここにありました。今でいうなら、承認欲求を満たされて育ったのでしょう。溢れるほど愛情を注ぐ両親を役所広司さんと、坂井真紀さん。菅田将暉さんの少しはみ出した賢治を励まし続けるトシを森七菜さん。「あめゆじゅとてちてけんじゃ」の詩句を思い出しながら2人の別れに涙しました。不治の病と言われた結核で娘や息子に先立たれた両親の悲しみはいかばかりか。
何不自由なく育ちながら、家族の期待とは別の道に行ってしまうボンボンに、朝ドラの主人公(モデル) 牧野富太郎さんが重なります。牧野さんと違って、多くの称賛が届いたのは亡くなってから。日本中の子どもたちの教科書に載り、たくさんの人に今も愛され続けていることを天上から見ているでしょうか。(白)
宮沢賢治というと「雨ニモマケズ」がまず思い浮かびますが、異国情緒漂う物語もあって、東北の花巻で、どんな生い立ちだったのかと気になっていました。本作は、そんな宮沢賢治を育んだ家族、特に、父の物語。
王様のブランチのLiLiCoさんのインタビューの中で、お父さんを演じた役所広司さんが、資料の少ないお父さんをどう演じたかを尋ねられた時の答えに、なるほど!と唸りました。
【原作に、「お父さんは厳格そうにしているけど、本当は隙だらけだから心配だ」という一文があって、子どもたちに厳しい顔をしているけど、子どもたちは逆に心配してくれているんだなと。そこが政次郎さんの愛嬌だと思って、ここを誇張できればいいと思いましたね】
破天荒な息子に戸惑いながらも、あたたかく見守ったであろうお父さんを思い浮かべることができました。(咲)
2023年/日本/カラー/シネスコ/128分
配給:キノフィルムズ
(C)2022「銀河鉄道の父」製作委員会
https://ginga-movie.com/
★2023年5月5日(金)ロードショー
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