2023年04月02日
パリタクシー 原題:Une belle course
監督・脚本:クリスチャン・カリオン(『戦場のアリア』)
出演:リーヌ・ルノー、ダニー・ブーン
パリのタクシー運転手シャルル。川向こうに高層ビルやエッフェル塔が見える。「川沿いは避けろ」という客に、「こっちは道のプロ」と譲らない。嫌な客を降ろしたところに、オペレーターから配車の指示が入る。ある老婦人をパリの反対側の老人施設まで送るという依頼。乗り込んできたマドレーヌと名乗るマダム。「半年前に階段から落ちて介護施設に入ることになったの。いくつに見える?」と聞かれ、「80位?」と答えると、「お上手ね。92歳よ。戦前、ヴァンセンヌで生まれたの。ちょっと寄ってくださる?」と頼まれる。遠回りだというシャルルに、「初キスは16歳。相手はアメリカ軍人のマット」と身の上話を始めるマドレーヌ。運転手に年を聞く。「46歳、名はシャルル」とやっと笑顔を見せるシャルルに、「一つの笑顔で1歳若返ると父から教えられた」とマドレーヌ。その父が、1943年10月7にナチスに銃殺されたことが壁に記されている。「父の死を知った数日後、米軍のマットと知り合い3か月一緒に過ごしたの。人生で一番幸せな日々だった。二度と会うことはなかったけど、知らない間に素敵な贈り物を貰っていたの。3500グラム、50cm。私たちの息子マチュー」
こうして、マドレーヌは自分の歩んだ人生を次々にシャルルに語り、ゆかりの場所に寄り道をしていく・・・
今は一人暮らしの老婦人マドレーヌが、かつての思い出の場所を辿るロマンチックな物語かと思いきや、そんな軟な話ではありませんでした。私生児を連れての結婚。1950年代のフランスでは、何をするにも夫の許可が必要で、大変な思いをしたことが語られます。仕事をするにも、銀行口座を開くにも夫の許可がいる時代だったことを知りました。
マドレーヌの身の上話を聞くうちに、シャルルもだんだん打ち解けてきて、自分のことも語り始めます。これがまた引き込まれる話なのです。そしてマドレーヌとシャルルの人生が素敵に交わる結末に、清々しい思いになりました。
クリスチャン・カリオン監督には、『戦場のアリア』が2006年のフランス映画祭で上映された折に、(白)さんと一緒にインタビューしています。(シネマジャーナル67号に掲載)とても温和な方でした。
国民的シャンソン歌手リーヌ・ルノーとフランスを代表する大人気コメディアンのダニー・ブーンを起用して描いた本作。パリの町を彷徨いながら、人生とは?と考えさせてくれる素敵な1作です。(咲)
2022年/フランス語/91分/スコープ/カラー/5.1ch
日本語字幕:星加久実
配給:松竹
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/paristaxi/
★2023年4月7日(金) 新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国順次公開
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