監督:中村真夕
撮影:中村真夕 辻智彦
出演:松村直登、松村代祐、半谷信一、半谷トシ子
原発事故による全町避難で無人地帯となった福島県富岡町にいまも一人で暮らすナオトは、 高度経済成⻑の裏側でカネに翻弄され続ける人生を送ってきた。原発事故後、人の人生を金で解決しようとする不条理、命を簡単に“処分”しようとする理不尽に納得できず、残った動物たちを世話しはじめた。生きること、生かし続けること。その日々の闘いが、ナオトの生きる道となっていた。
あれから 8 年。新たな命が生まれ消えていく中で、ナオトは変わらず動物たちに餌をやる日々を過ごしている。「将来の糧のため」ニワトリを飼い、蜜蜂を育て始めた。富岡は帰還できる町となったが、若い人たちは戻らない。コロナ禍で開催されたオリンピックでは「復興五輪」の PR として、誰もいない福島の風景の中を聖火リレーが走り過ぎた。
『ナオトひとりっきり Alone in Fukushima』(2015)の続編。中村監督は富岡町に通い、ナオトの日々を撮影し続けてきました。ナオトの家族はシロとサビ(ネコ)、モモとサクラ(ダチョウ)、10頭のウシ、ポニーのヤマ、イヌのイシとアキと子犬。2020年3月、帰還困難区域にある夜ノ森駅が再建されて、道も開通しましたた。けれどもコロナ禍でオリンピックは延期、多くの住人が戻らない中、建物ばかりが空しいです。元気な姿が映像に残っているお父さんも、ある日亡くなられました。
ひとり土地に残って、見捨てられた動物たちの世話を10年も続けたナオトさんは「100年たてば元の村に戻るかもしれねぇな」と苦笑いします。今生きている私たちには、確かめることもできません。
原発は古いものから閉じる方向でいたはずではなかったでしょうか?再稼働の動きがあるのはなぜ?
汚染された土は膨大な費用をかけて集められ、パックされて累々と並べられています。汚染水は海上放出され、これが海の生き物にどんな影響をあたえるのか誰も説明しません。忘れてしまうのを待たれているような気がします。
ナオトさんの10年を見つめることは自分を振り返ることでもありました。(白)
中村真夕監督 2/6 シアターイメージフォーラム
2013年夏から取材を開始した中村監督は「政府の避難要請を無視して、原発から至近距離の場所でひとり暮らすナオトさんの存在は国内メディアではタブー視され、テレビに取材企画を上げても上がOKを出さなかった。だから私は映画として彼を撮影することで世に出そうと思った」と話し、10年弱に及ぶ現地取材を通して感じた富岡町の景色を「住人がナオトさん以外いなくなると、どんどん自然(緑)が溢れてきて、まるである種のユートピアにも思えた」と語った。(トークイベント報告より)
2023年/日本/カラー/106分
製作・配給:Omphalos Pictures, Siglo
配給・宣伝協力:ALFAZBET
http://aloneinfukushima.jp/
★2023年2月25日(土)ロードショー