監督:今泉力哉
原作:安田弘之
(秋田書店『秋田レディース・コミックス・デラックス』刊)
脚本:澤井香織、今泉力哉
撮影:岩永洋
音楽:岸田繁
主題歌:くるり
出演:有村架純(ちひろ)、豊嶋花(瀬尾久仁子)、嶋田鉄太(佐竹マコト)、 van(バジル)、若葉竜也(谷口)、佐久間由衣(ヒトミ)、長澤樹(宇部千夏)、市川実和子(もうひとりのちひろ)、根岸季衣(永井)、平田満(尾藤)、リリー・フランキー(内海)、風吹ジュン(多恵)
ちひろは風俗嬢をやめて、海辺の町のお弁当屋さんで働いている。元・風俗嬢だったことを隠すこともなく、明るくおおらかだ。風俗嬢と知って寄ってくるお客にも、子どもにも、ホームレスのおじいちゃんにも、誰にでも分け隔てなく接している。そんなちひろの周りには、吸い寄せられるように寂しい人が集まってくる。厳しい家庭の女子高生オカジ、働く母と二人暮らしの小学生マコト、父親との確執を抱える谷口…。彼らとごはんを食べて、笑ったり怒ったり、はっきりとものを言うちひろに力をもらって、誰もが前向きになっていく。
原作のコミックを途中まで読んでいます。9巻のうちまだ3巻。人気の原作です。有村架純さんは「いちず」「一生懸命」のイメージがありますが、こういうサバサバした人も似合うんですね。原作も監督も男性ですが、男女関わらずこういう人いたらいいな、と思う造形かなと思います。今泉監督の網の目はとても細かいんじゃないでしょうか。ほかでは取りこぼすような感情をすくってセリフや視線で見せてくれます。
ちひろは聖人君子ではないし、え?と思う行動もします。実は孤独も抱えていて、愚痴もこぼします。唯一愚痴をこぼせるのがショーパブの歌姫・バジル役のvanさん、映画初出演だそうです。長身でコミックの雰囲気がぴったりの美女です。
お弁当屋さんの主は平田満さん、その奥さん役が風吹ジュンさん。若いころからいろんな作品で観ている女優さんです。最近はお母さん役でよく見ますが年齢を重ねても可愛らしいのは変わりません。穏やかで包容力のあるまなざしを向けられるとホッと安心します。ちひろが年を重ねると風吹さんになりそう。(白)
こんなにたくさん寂しさを抱えた人たちが出てくるのに、観終わって、どこかほっこりあたたかい気持ちになれました。美味しい食事が、ひと時の幸せをもたらしてくれることも感じました。タケノコご飯や、いろいろオカズが詰め込んであるお弁当も美味しそうでしたが、何より、マコトの母親のつくる焼きそばの美味しそうなこと! 目玉焼きが乗って、脇には切込みの入ったウィンナー。一見、子育てを放棄したような若いママですが、愛情たっぷり。
いろいろなエピソードが散りばめられていましたが、リリー・フランキーさん演じる内海が語る眠っている金魚の話が面白かった! (咲)
2023年/日本/カラー/シネスコ/131分
配給:アスミック・エース
(C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014
https://chihiro-san.asmik-ace.co.jp/
★2023年2月23日(祝・木)Netflixで配信。一部劇場で同日公開
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