2023年02月17日

ワース 命の値段    原題:Worth

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監督:サラ・コランジェロ
脚本:マックス・ボレンスタイン
出演:マイケル・キートン、スタンリー・トゥッチ、エイミー・ライアン

9.11同時多発テロ被害者と遺族 約7000人への補償プログラムに挑んだ人々の物語

2001年9月11日、アメリカを襲った同時多発テロ。9月22日、政府は、被害者と遺族を救済するための補償基金プログラムを立ち上げる。プログラムの特別管理人の重職に就いたのは、ワシントンD.C.の弁護士ケン・ファインバーグ(マイケル・キートン)。調停のプロを自認するファインバーグは、独自の計算式に則って補償金額を算出する方針を打ち出す。だが、彼が率いるチームはさまざまな事情を抱える被害者遺族に接するうちに、いくつもの矛盾にぶち当たる。被害者遺族の対象者のうち80%の賛同を得ることを目標とするチームの作業は停滞する。一方、プログラム反対派の活動は勢いづいていく。そうした中、プログラム申請の最終期限、2003年12月22日が迫ってくる・・・

「こんな事態を招いた国にも怒っている」
冒頭に、息子を亡くした母親が語ったこの言葉が掲げられたことに、まず、この映画に好意を持ちました。「テロとの戦い」として、あからさまにイスラーム教徒を敵呼ばわりしたブッシュ大統領と対照的な言葉だったからです。
年齢も職業も様々な犠牲者の方たちの補償金をどのように算出するのか・・・ 
さらに、遺された人々にも様々な事情があることに、実務を担当した人たちは悩まされることになります。「私情ははさむな」が鉄則なのです。
多くの事例から、取り上げられていたのは、結婚を控えていた同性の恋人を亡くした男性への補償や、子供が3人いた消防士に、別の女性との間にも2人の子供がいて、その子たちへの補償をどうするかという例。もっともっと様々なケースがあったと思うのですが、この二つの事例に時間を割きすぎていた感が残りました。
ファインバーグ氏に対して、「ユダヤ人の弁護士などに任せられない」という言葉も浴びせられたそうですが、2年3か月という期限で、彼の率いるチームは目標だった8割以上の賛同を得たとのこと。未曾有の大惨事の犠牲者に対して、米国政府が素早い対応をしたことを知ることのできた映画でした。
一方で、ブッシュ大統領が、イラクのフセイン大統領が大量破壊兵器を隠し持っているという嘘まで発表して、対テロ戦争を繰り広げた功罪についても、わずかですが触れられていました。冒頭の「こんな事態を招いた国」について、もっと突っ込んでほしかったところです。(咲)


9.11被害者補償基金:2001年9月11日のテロ関連の航空機墜落事故、またはその直後に行われた瓦礫撤去作業の結果、身体的被害を受けた、または死亡したすべての個人(または死亡した個人の代理人)に対する補償を提供するために設立された。2001年から2003年にかけて運営され、計5560人に 公的資金から 70億ドル超を支払った。2011年と2019年に再開および延長が決定。長期の健康被害に苦しむ人々の救済を続けている。

2019年/アメリカ/英語/118分/シネスコ/カラー/5.1ch
日本語字幕:髙内朝子
提供:ギャガ、ロングライド 
配給:ロングライ
公式サイト:https://longride.jp/worth/
★2023年2月23日よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開


posted by sakiko at 21:21| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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