2023年01月29日

バンバン!  原題:BANGBANG!

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©️Fox STAR Studios

監督:シッダールト・アーナンド(『WAR ウォー!!』)
出演:リティク・ローシャン(『スーパー30 アーナンド先生の教室』)、カトリーナ・カイフ(『チェイス!』)、ダニー・デンゾンパ、パワン・マルホートラ

ロンドン。国際手配されていたテロリストのオマル・ザファル(ダニー・デンゾンパ)が拘束される。犯罪人引渡条約が締結されない限り、インドに移送されることはないと強気のオマル。そんな折、ロンドン塔に展示されているインド至宝のダイヤモンド“コーヒヌール”が何者かに盗まれる。オマルがいつかインド人の手で取り戻したいと狙っていたダイヤだ。監視カメラには、世界的に知られる大泥棒のラージヴィール(リティク・ローシャン)が映っていた。
インド北部の町シムラー。銀行で受付係をしているハルリーン(カトリーナ・カイフ)は、勤続30年の女性が独身で退職する姿をみて、自分の将来が不安になり、婚活サイトのブラインドデートに申し込む。指定のレストランにやってきた相手のヴィッキー(リティク・ローシャン)は長身のイケメン。話もはずんで、一緒に歌いながらダンスもして、ハルリーンはすっかり彼の虜になる。だが、その後ひと騒動があって、実は自分はヴィッキーではなく、ロンドンでコーヒヌールを盗んだことから追われているラージヴィールだと明かされる。ハルリーンに忠告を残し、彼女を睡眠薬で眠らせて去ってしまう。
翌日、銀行にいたハルリーンは、ゾラワール捜査官(パワン・マルホートラ)と名乗る男に連行され車に乗せられる。ラージヴィールの忠告を思い出し、なんとか車から脱出すると、そこにラージヴィールが現れる。コーヒヌールを携え、二人の逃避行が始まる・・・

ロンドンからインドに舞台を移した物語は、その後、チェコのプラハ、ギリシャのサントリーニ島とミコノス島、タイのプーケットとシミラン諸島、そしてアラブ首長国連邦のアブダビへと駆け巡ります。アクションにロマンス、ボリウッド映画お約束の歌と踊りも満載ですが、実は、トム・クルーズ&キャメロン・ディアスのコンビで大ヒットした『ナイト&デイ』の正式インド版リメイク。私は『ナイト&デイ』を観ていないので、リメイクと気にせず楽しみました。逆にこれから『ナイト&デイ』を観て、もとの映画がどんなものだったのかを確認したいと思います。

本作で一番印象に残ったのが、ハルリーンのお祖母ちゃん。ハルリーンは、10歳までカナダで育ったのですが、両親が交通事故で亡くなり、インドの祖父母に引き取られ、祖父が亡くなってからは祖母と二人暮らし。お祖母ちゃんは、昔、すごくモテたと語り、お祖父ちゃんが大好きでした。ハルリーンが恋した様子を見て、「胸の宝石箱からコーヒヌールが盗まれたね」と言います。
公式サイトで「コヒヌール」と表記されているダイヤモンドは、コーヒヌールの方が発音に近いと思いますが、「光(ヌール)の山(コー)」の意を持つ世界最大といわれるダイヤモンド。所有の変遷については諸説ありますが、150年程前に、インドを支配した大英帝国のヴィクトリア女王のものになり、現在はロンドン塔で展示されています。
冒頭、ロンドンの場面で、「コーヒヌールを返せ!」のデモが警察の監視カメラに映るのがちらっと出てきます。このところ、植民地時代に宗主国に持っていかれた文化遺産の返還を求める動きが多いことに思いが至ります。

チャーミングなハルリーンを演じているカトリーナ・カイフは、父親がカシミールにルーツを持ち、母親がイングランド人というハーフ。『タイガー 伝説のスパイ』(原題:Ek Tha Tiger  2012年 監督・脚本:カビール・カーン)では、サルマーン・カーン演じるインドのスパイが恋する女性ゾヤですが、実はパキスタンのスパイという役どころ。
『命ある限り』(原題:Jab Tak Hai Jaan 2012年 監督:ヤシュ・チョプラ)では、シャー・ルク・カーンとの悲恋の恋を演じています。
『チェイス!』では、サーカス団員として、アーミル・カーンの相手役。

リティク・ローシャンは、本作ではイケメンぶりを全開していますが、『スーパー30 アーナンド先生の教室』では、実直なアーナンド先生を体現。こんなイケメンだったの~?と、見直してしまいました。

本作では、世界各地の景色はもちろん美しいのですが、何より、山肌に家が立ち並ぶシムラーの風情が素敵です。インド北部ヒマラヤの山麓にあるシムラーは、イギリス統治時代、1865年にインド帝国の夏の首都に定められた町。冬の場面では、雪に覆われ一面の銀世界です。
ラージヴィールが、「いつか、家に帰りたい」と言っているのですが、デヘラドゥ-ンの彼の実家の表札には、「Ghar」と書いてあります。ヒンディー語やウルドゥー語で、gharは家の意味。表札にそう書く??
その家を訪ねたハルリーンは、お母さまから「長男は軍に召された」と聞かされます。実は、映画の冒頭、ロンドンでの場面で、オマル・ザファルをインドに護送しようと訪ねてきたヴィレン(ジミー・シェールギル)が母親からの電話に応じている場面があって、「マザコンのヴィレン」と呼ばれながら、オマルの手下に殺されたのです。出番の少なかった彼にもちゃんと意味があったこととして、ネタバレお許しを!

2014年に製作された本作は、今になってやっと一般公開されるのですが、もしかしたら、シャー・ルク・カーン復活作といわれるシッダールト・アーナンド監督の『Pathaan』を日本で公開する前哨戦?と、密かに思っています。(咲)


★『Pathaan』については、こちらをどうぞ!
シャー・ルク・カーン復活作『Pathaan』  インドで大ヒット公開中! (咲)



2014年/インド/ヒンディー語/シネスコ/156分
配給:SPACEBOX
宣伝:シネブリッジ
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/bangbang
★2023年2月10日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー



posted by sakiko at 18:32| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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