2023年01月22日

すべてうまくいきますように   原題: Tout s'est bien passé

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(C)020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

監督・脚本:フランソワ・オゾン(『ぼくを葬る』『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』)
出演:ソフィー・マルソー アンドレ・デュソリエ ジェラルディーヌ・ペラス シャーロット・ランプリング ハンナ・シグラ

小説家のエマニュエルは、85歳の父アンドレが脳卒中で倒れたという報せを受け病院に駆けつける。集中治療室からは脱することができたが、身体の自由がきかず、「こんな姿はもう自分じゃない、終わらせてほしい」という。エマニュエルは妹のパスカルに相談し、父の願いを受け入れるしかないと、スイスの尊厳死協会に相談する。段取りや日程も決めるが、間近になって、父は孫ラファエルの演奏会を観てからにしたいと、実行日を延期することになる。生きる気持ちを取り戻したのではと、エマニュエルたちは期待するが、父は皆に自分で終わらせることを楽しそうに告げる・・・・

父は元実業家で、母は彫刻家。裕福な暮らしをしていて、父は美術館の運営にも関わっているらしく、人生を謳歌してきたようです。
葬儀の時には、ユダヤのカディッシュ(祈り)だけ唱えてくれればいいという言葉から、ユダヤだとわかりました。
妹パスカルは、クラシック音楽祭に携わっているのですが、ほんとうは第二次世界大戦における楽器の破壊を研究したかったと語るのを聞いて、尊厳死協会の女性が、ご家族にホロコーストの犠牲者がいらっしゃるのかと聞く場面がありました。父の従妹は強制収容所からの生還者。そして、父は少しドイツ語が話せます。ナチスが台頭した時代、どんなことがあったのでしょう・・・
ジェラールという男性が、父が一人になる時を狙って父に会いにいくのですが、エマニュエルやパスカルはジェラールを要注意人物として認識しています。でも、父は「もう来るなとは言えなかった」と言います。いったいどういう係わりがあった人物なのか謎が残りました。
スイスでは安楽死が認められていますが、それでも尊厳死協会の女性は、私たちは見守るだけ、自分で薬を飲む必要があると言います。
本作を観て、真っ先に思い出したのが『母の身終い』(2012年/フランス 監督:ステファヌ・ブリゼ)なのですが、その映画でも同様でした。
それにしても、スイスでの尊厳死はお金があるから出来ること、貧しい人は死を待つしかないという言葉にドキッとしました。
エマニュエルが時折、少女時代の父とのことを思い出す場面が出てきます。娘としては、父の思いはわかるけれど、やっぱり自死という形で見送るのはつらい・・・ ソフィー・マルソーがそんな娘の思いを体現していて素敵です。(咲)


カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品

2021/フランス・ベルギー/フランス語・ドイツ語・英語/113分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch
字幕翻訳:松浦美奈
提供:木下グループ 
配給:キノフィルムズ
公式サイト:https://ewf-movie.jp/
★2月3日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマほかで全国公開

posted by sakiko at 20:36| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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