2023年01月21日
ピンク・クラウド(原題:A Nuvem Rosa 英題:The Pink Cloud)
監督・脚本:イウリ・ジェルバーゼ
撮影:ブルーノ・ポリドーロ
出演:ヘナタ・ジ・レリス(ジョヴァナ)、エドゥアルド・メンドンサ(ヤーゴ)
一夜限りの出会いを楽しんでいたジョヴァナとヤーゴ、二人寛いでいると警報が響き渡った。屋内に入って施錠せよという。空はピンク色の雲で覆われ始めていた。ニュースによるとこの雲は世界中で突如発生し、強い毒性があり10秒で絶命するという。ジョヴァナは妹と親友、ヤーゴは老いた父親が気にかかるが、外出は禁止されて部屋から出ることができない。オンラインで無事を確かめ合い、いつか雲は消えるだろうと楽観視するが、期待は裏切られ続ける。二人は役割分担して日々暮らすことになった。そして二人の間に男の子が誕生し、リノと名付けられた。リノは窓からピンクの雲漂う無人の外を眺め、部屋の中だけで成長していく。
コロナのパンデミック以前に完成した作品ですが、まるで状況を予見してなぞるようなストーリーに、製作した側もとても驚いたようです。
すぐにインフラや食料はどうなるの?などと心配になりますが、映画ではネットが盛んでオンラインで注文したものが、窓に取り付けられた太いパイプを通って届けられます。ジョヴァナの出産もオンラインの指導のもと、ヤーゴが取りあげます。
もっと大騒ぎになるだろうとか、外に出られずに生活必需品はどう作られるのかとか、細かく突っ込むときりのない設定です。ではありますが、監督が描きたかったのは死と隣り合わせの非日常が日常となったとき、人間はその中で何を考え、何を求めていくのかということ。
現状を受け入れて前向きに生きようというヤーゴに、ジョヴァナは共感できません。二人の食い違いの中、日々リノは成長します。オンラインでつながっていた人たちにも変化があります。コロナを経験している身には絵空事とは思えず、今も慣れるばかりでなく、解決策はないのかと探したくなります。(白)
イウリ・ジェルバーゼは、これまでに6本の短編の脚本、監督を手がけてきて、本作が長編デビュー作。
突っ込みどころはいろいろありますが、「ロックダウンの状況を論理的に見せることを目指した脚本ではありません」と監督は語っています。 それでも、世界中がコロナ禍を経験した今、他人事ではなく、自分たちの問題として、この映画を捉えることができるでしょう。
閉じ込められた中で、ジョヴァナは最初望んでなかった子供をヤーゴとの間に設けますが、それでも普通の家庭生活をおくりたくないと抵抗します。
ほぼ見知らぬ男性と二人きりの世界に閉じ込められたとき、さて、どう行動する? 女性監督ならではの感情が感じられる場面が多々ありました。(咲)
2020年/ブラジル/シネスコ/103分/ポルトガル語
字幕翻訳:橋本裕充
配給:サンリスフィルム
(C)2019 Luminary Productions, LLC.
https://senlisfilms.jp/pinkcloud/
https://twitter.com/thepinkcloud_jp
★2023年1月27日(金)ロードショー
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