2023年01月15日

新生ロシア1991  原題The Event

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(C)Atoms & Void

監督 セルゲイ・ロズニツァ

1991年 8 ⽉19 ⽇。ペレストロイカに反対する共産党保守派がゴルバチョフ⼤統領を軟禁し軍事クーデターを宣⾔した。テレビはニュース速報の代わりにチャイコフスキーの「⽩⿃の湖」を全⼟に流した。モスクワで起きた緊急事態にレニングラードは困惑した市⺠で溢れかえった。夜の街では男がギターを掻き鳴らしウラジーミル・ヴィソツキーの「新時代の歌」を歌い、ラジオからはヴィクトル・ツォイの「変化」が流れた。⾃由を叫んだ祖国のロックが鳴り響くレニングラードは解放区の様相を呈し、8万⼈が集まった宮殿広場でついに⼈々は共産党⽀配との決別を決意する・・・

本作はレニングラード・ドキュメンタリー映画スタジオの 8 名のカメラマンが混乱する市中に紛れ撮影したモノクロ映像をセルゲイ・ロズニツァが⼿にし、3⽇間で終わった「ソ連 8⽉クーデター」に揺れながらもロシアの⾃由のため⽴ち上がったレニングラードを再構成したもの。
カメラはエリツィンを⽀持し市⺠にロシアの⺠主主義を訴えるアナトリー・サプチャーク・レニングラード市⻑も追いかけている。サプチャークの側近を務めていた若かりし頃のウラジーミル・プーチンの姿も映している。プーチンは 旧体制を解体したこの出来事の9年後にロシア連邦の⼤統領となり絶対的な権⼒を⼿にして現在に至っている。

このクーデターをきっかけに、ペレストロイカでソ連邦の緩やかな改⾰を考えていたゴルバチョフは失脚し、連邦最⼤の共和国であるロシアのトップだった急進改⾰派のエリツィンが実権を握り、結果的に同年12⽉にソ連邦の崩壊へ繋がりました。
当時の映像は、レニングラードの人たちが、モスクワでクーデターが起こったとの報に、純粋に社会の変革と自由を求めている姿を伝えてくれます。
共産党が良しとしなかったロシア正教会の司祭がスピーチする姿も出てきました。
ソ連崩壊後のロシアで、人々はどんな自由を得ることができたのでしょうか・・・
領土を拡大しようとする指導者のもとで、どんな思いをしていることでしょう・・・
歴史に「もし」はありませんが、違う人物が実権を握っていたなら・・・と、つい考えさせられました。

☆本作で描かれた8月クーデターの日々を含む数年間を、リトアニア側から見たのが、同じくロズニツァ監督の『ミスター・ランズベルギス』です。非暴力でソ連からリトアニアを独立させたランズベルギス。こんな方に国を率いてほしい!(咲)


第72回ヴェネチア国際映画祭正式出品

2015年/70分/ベルギー=オランダ/ロシア語/4:3
⽇本語字幕 守屋愛
配給 サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/theevent
★2023年1⽉21⽇(⼟)よりシアター・イメージフォーラム他全国順次公開





posted by sakiko at 19:21| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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