2023年01月15日
ヒトラーのための虐殺会議 原題:Die Wannseekonferenz 英題:THE CONFERENCE
監督:マッティ・ゲショネック
出演:フィリップ・ホフマイヤー、ヨハネス・アルマイヤー、マキシミリアン・ブリュックナー
1942年1月20日正午、ベルリン。雪が残る冷えた日。
ヴァン湖(ヴァンゼー)の畔にある大邸宅にナチス親衛隊と各事務次官が、国家保安部代表のラインハルト・ハイドリヒに招かれ、ユダヤ人問題の最終的解決について会議が開かれた。「最終的解決」とは、ヨーロッパにいるすべてのユダヤ人を計画的に駆除する、つまり抹殺することを意味するコード名。ヴァンゼー会議の出席者の中で異を唱えた者は一人もおらず、これにより、現代国家が1つの民族の抹殺に乗り出すという前代未聞の政策が行われた。議事録には、移送、強制収容、強制労働、計画的殺害など様々な方策が詳述されており、単にユダヤ人を排除するだけではなく、移送と同時に強制労働者として利用する目的もあった。会議から1年以内にホロコーストは加速し、ユダヤ人の多くは絶滅収容所に到着すると同時に強制労働者に選別されることなく殺害されていった・・・
※2022年はヴァンゼー会議から80年
会議に出席した高官15名と秘書1名
ラインハルト・ハイドリヒ(国家保安本部長官/ベーメン・メーレン保護領総督代理/親衛隊大将)
オットー・ホフマン(親衛隊人種・植民本部/親衛隊中将)
ハインリヒ・ミュラー(国家保安本部ゲシュタポ局長/親衛隊中将)
ゲルハルト・クロップファー(党官房局長/親衛隊准将)
フリードリヒ・ヴィルヘルム・クリツィンガー(首相官房局長)
ヴィルヘルム・シュトゥッカート(内務省次官)
マルティン・ルター(外務省次官補)
エーリヒ・ノイマン(四か年計画庁次官)
ローラント・フライスラー(法務省次官)
ルドルフ・ランゲ(ラトヴィア全権区保安警察・保安部司令官/ オストラント全権区保安警察・保安司令部代理/親衛隊少佐)
カール・エバーハルト・シェーンガルト(ポーランド総督府保安警察・保安部司令官/親衛隊准将)
ヨーゼフ・ビューラー(ポーランド総督府次官)
ゲオルク・ライプブラント(東部占領地域省局長)
アルフレート・マイヤー(東部占領地域省次官・北ヴェストファーレン大管区指導者)
アドルフ・アイヒマン(国家保安本部ゲシュタポ局ユダヤ人課課長/親衛隊中佐)
インゲボルグ・ワーレマン(秘書)
本作は、アドルフ・アイヒマンによって記録された会議の一部のみが残されていた議事録に基づき、80年後の2022年にドイツで製作されたもの。
すでに欧州では1933年以来、ユダヤ人迫害が行われていて、「ラトビアからユダヤ人が一掃された」との報告に、皆が、グーの手(拳)で机を叩きます。ユダヤ人をマダガスカルに送る案は、制海権がイギリスにあって無理という発言も。移送先はもうない、さて、どうするというのがヴァンゼー会議でした。
「低劣な人種をすべて排除することが長期的目標」
「読み書きは小学生程度、計算は100までで充分」と、ドイツ民族以外を蔑視する言葉も。
「アーリア化が済んだ」は、没収したという意味。
「ローマ人は、ユダヤ人が面倒で離散させた。我々が尻ぬぐい。病原体を根絶しないと」
「欧州全域にいるユダヤ人は、1100万人。銃殺するには、1100万発の銃弾はもったいない」
「警告の臭気がついていない殺虫剤をつかえば一気に片付けられる」
こんな会話が交わされ、最終的に、東方のアウシュヴィッツ村に欧州全域のユダヤ人を移送して、定住させるのでなく、抹殺することが決定されたのです。
この会議には、アドルフ・ヒトラーは出席していません。いかに、当時のナチスドイツが、アーリア民族を代表するドイツ人こそ優秀で、他者は排除すべきという考えで統一されていたことがわかります。
記録した秘書の女性も同じ考えだったのでしょうか・・・ こんなことを記録することに苦悩はなかったのでしょうか・・・ (咲)
観終わって「これは人間が人間を片付けよう、抹殺しよう」という会議なのだとぞわぞわと寒くなってきました。顔色ひとつ変えず、胸も痛めることもなく話すこの人たちに、ユダヤ人はゴミやがらくたと同様なのでした。家に帰れば良き父親や夫であったでしょうに。これは記録に基づき、80年後に再現した映画です。
救われるのはドイツで作られた作品ということです。加害国でありながらきちんと事実を掘り起こして、伝えていくことから逃げていません。風化し忘れられていくことを止めるには、そうはしない、という人の意思が大事。それが繰り返さないことにつながると信じます。(白)
2022年/ドイツ/112分/ビスタ/5.1ch/G
字幕翻訳:吉川美奈子
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx-v.com/conference/
★2023年1月20日(金)より 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、 YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください