2023年01月08日

SHE SAID シー・セッド その名を暴け(原題:She Said)

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監督:マリア・シュラーダー
原作:「その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―」ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー/著(新潮文庫刊)
脚本:レベッカ・レンキェビチ
撮影:ナターシャ・ブライエ
音楽:ニコラス・ブリテル
出演:キャリー・マリガン(ミーガン・トゥーイー)、ゾーイ・カザン(ジョディ・カンター)、パトリシア・クラークソン(レベッカ・コーベット)、アンドレ・ブラウアー(ディーン・バケット)、ジェニファー・イーリー(ローラ・マッデン)、サマンサ・モートン(セルダ・パーキンス)、アシュレイ・ジャッド(本人)

ニューヨーク・タイムズ紙の記者ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターは、大物映画プロデューサーのワインスタインが数十年にわたって続けてきた性的暴行について取材を始めるが、ワインスタインがこれまで何度も記事をもみ消してきたことを知る。被害女性の多くは示談に応じており、証言すれば訴えられるという恐怖や当時のトラウマによって声を上げられずにいた。問題の本質が業界の隠蔽体質にあると気づいた記者たちは、取材対象から拒否され、ワインスタイン側からの度重なる妨害を受けながらも、真実を追い求めて奔走する。

2017年10月、ニューヨーク・タイムズ紙がハリウッドの重鎮、数々の名作を手掛けた映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ・性的暴行事件の告発記事を掲載しました。これは映画業界のみならず国を超えて性犯罪被害者が声をあげることを促し、#MeToo運動を爆発させました。この記事は翌年、調査報道ピューリッツアー賞を受賞しています。

映画は女性記者二人の妻や母親としての日常生活、その中で丹念な取材を続ける様を映し出します。被害女性たちが、二度と触れてほしくないと思っていることも理解し、孤立させまいと何度も説得を試みます。不利な記事を出されたくない側もいやがらせや脅しを繰り返します。彼女たちが屈しなかったのは、記者としての使命感や誇りやパートナーの応援、上司たちの毅然とした後ろ盾があったればこそ。責任を部下に押し付けて尻尾切りする人ばかりではないことに、ほっとします。
タイトル「その名を暴け」は、ちょっと違う気がしました。暴きたいのは「真実」で、そのために多くの「彼女たちが語った」んです。粘り強い報道記者、証言に一歩踏み出した勇気ある女性たち、おかげで奔流のように噴出した#MeToo運動、あきらめない人たち。この熱い流れを見られて良かった~。(白)


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証言した人も報道した人たちも、女性たちの勇気と覚悟の物語
「MeToo」運動のきっかけともなったと言われている「ハーヴェイ・ワインステイン事件」。20年以上に渡りハリウッドに君臨した映画プロデューサー・ハーベイ・ワインスタインの性暴力に関する取材を進める記者たちの前に、被害者を縛る秘密保持契約の存在や、敏腕弁護士が登場し、障害が立ちはだかるが、ニューヨーク・タイムズ編集部のバックアップもあって記事をだすことができた。報道記事には現れない、入念な調査、証言してくれる人への粘り強い行動も描かれ、それにほだされた人たちが証言にいたるまでの過程をドキドキしながら観た。そして、セクハラ被害を受けた女性たちが勇気を持って名乗り出て、自分たちだけでないという事実が広がっていったことに溜飲が下がる思いと、あまりの多さに複雑な思いにもなった。そして、記者たちが対するのはハーベイ・ワインスタインだけではなく、大きな権力を持つ社会そのもの。問題の本質は性加害者が守られず、加害者に有利なシステムや法律。
登場人物が多くて、ハリウッド映画事情に詳しくない私としては、記者たちの以外の俳優さんたちの名前がわからずだったけど、あちこちに話が飛ぶので、前もって人名を把握していったほうが理解しやすいかも。
日本でもこの数年で、勇敢にセクハラを告発した方たちがいて、大きく報道された方としては、報道記者の伊藤詩織さん、最近では自衛隊内での性被害を告発した五ノ井さんがいました。二人は実名、顔出しで被害を訴えましたが、日本の映画界でも、去年は実名を出して告発した方がいました。
中島みゆきさんも、20数年前に出した本の中で、音楽業界でのセクハラについて書いています。新人の頃、ツアー仲間のミュージシャンから、「夜、ホテルの部屋の鍵を開けておけ」と言われたそうです。彼女は鍵をしっかり閉めたけど眠れなかったと書いていました。彼女ほどの歌手でなければ、そういうことも書けなかったと思うけど、音楽業界でもそういうことが日常茶飯事だった(今もかも)ようです。
世界も日本も、少しづつ変わってきている部分もありますが、まだまだ氷山の一角だと思います。
この作品は女性だけでなく、男性こそ観てほしい作品です(暁)。


2022年/アメリカ/カラー/ビスタ/129分
配給:東宝東和
(C)Universal Studios. All Rights Reserved.
https://shesaid-sononawoabake.jp/
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★2023年1月13日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 12:05| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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