2023年01月04日
カンフースタントマン 龍虎武師 原題:龍虎武師 英題:Kung Fu Stuntmen
監督:ウェイ・ジェンツー(魏君子)
出演:サモ・ハン(洪金寶)、ユエン・ウーピン(袁和平)、ドニー・イェン(甄子丹)、ユン・ワー(元華)、チン・カーロッ(錢嘉樂)、ブルース・リャン(梁小龍)、マース(火星)、ツイ・ハーク(徐克)、アンドリュー・ラウ(劉偉強)、エリック・ツァン(曾志偉)、トン・ワイ(董瑋)、ウー・スーユエン(吳思遠)
*アーカイブ出演:ブルース・リー(李小龍)、ジャッキー・チェン(成龍)、ジェット・リー(李連杰)、ラウ・カーリョン(劉家良)、ラム・チェンイン(林正英)
香港アクション映画の発展に身を捧げてきたスタントマンたちの激闘の歴史に迫ったドキュメンタリー
ブルース・リー、ジャッキー・チェン、ジェット・リー、ドニー・イェン・・・ 世界に名を轟かせる香港のアクションスターたち。香港映画のアクションが、ハリウッドをはじめとする世界中の映画界に大きな影響を与えたのは、彼らスターたちの実力だけでなく、映画の中で、彼らの攻撃を受けて派手に吹っ飛び、時には彼らの華麗かつ危険なアクションの代役を務めたスタントマンたちの存在があったからこそ。
著名な映画評論家でもあるウェイ・ジュンツー監督は、3年の撮影期間をかけて、100人近くの香港アクション関係者を徹底取材。膨大なアーカイブ映像も盛り込み、香港アクション映画の歴史を網羅したドキュメンタリーが出来上がった。
カンフー映画のルーツは、京劇にある。
1930年代、中国の京劇役者の多くが、日本の本土侵略から逃れるために香港に移住した。貧しい家庭の子供たちに京劇を教えるようになり、1960年代には香港に4校の京劇学校ができた。ジョン・ローン、サモ・ハン、ジャッキー・チェン、ユン・ピョウらが学んでいたが、京劇人気は下火になり、活躍の場を映画のスタントに移す。当時、東洋一の巨大スタジオを持つショウ・ブラザーズの製作していた映画のカンフー・シーンは、京劇の流れを汲む舞踏のような戦い方が主流。武術と演技の基礎を叩きこまれた彼らは、多様なアクションを演じる事ができた。
1971年、ゴールデン・ハーベストが製作したブルース・リー主演作『ドラゴン危機一発』が驚異的なヒット。これまでにない実践的なファイトシーンは、カンフー映画に変革をもたらすが、1973年にブルース・リーが亡くなり、カンフー映画の人気は低迷。多くのスタントマンが職を失ってしまう。
それを打破したのは映画監督兼俳優のラウ・カーリョンとサモ・ハン。彼らの活躍で、カンフー映画は活気を取り戻しはじめる。この勢いに乗りプロデューサー兼監督のウー・スーユエンは、武術指導だったユエン・ウーピンを監督に、ブレイク前のジャッキー・チェンを主演に『スネーキーモンキー 蛇拳』(78)と『ドランク・モンキー 酔拳』(78)を製作。この2作の大ヒットにより、アクション・コメディがトレンドとなる。
香港映画界に再びカンフー映画ブームが到来。サモ・ハン、ジャッキー・チェン、ユエン・ウーピン、ラウ・カーリョンたちは自分のスタントチームを作り、次々とアクション映画を製作し、競い合う。スタントマンたちは「決して“ノー”と言わない」常軌を逸した精神で、香港アクション映画の最盛期を支えていった・・・
『男たちの挽歌』で、レスリー・チャンにはまり、1990年代の日本での香港映画絶頂期には、レスリー出演作だけでなく、どんなジャンルの香港映画も観まくっていた私。思えば、その前に、ジャッキー・チェンの『酔拳』や、サモ・ハン・キンポーの『燃えよデブゴン』を観ていたからこそ、レスリーに出会えたのでした。ハリウッドのアクション映画には、興味が持てないのに、なぜか香港のアクション映画にはワクワク。ありえないような場面は、スタントの人たちの死をも恐れない覚悟の賜物だったのですね。
サモ・ハンが体形のために、あまりスタント役をもらえず収入が少なかった時代があったとのこと。だからこそ、監督・主演で活路を得たのですね。エリック・ツァンは、名俳優として認識していましたが、元々はサッカー選手からスタントマンになったと知りました。
それほど多くのカンフー映画は観ていないのですが、どこか懐かしさを感じた92分でした。(咲)
小学生だった息子と一緒にジャッキーやユン・ピョウの映画を劇場で、Mr.BOOやブルース・リーの作品はテレビで観ていました。あのアクションの陰に、有名無名のスタントマンたちの汗と涙と血が流れていました!今では考えられない命がけの危険な現場です。
アクション映画のレジェンドたちの当時の思い出話は、郷愁に満ちていますが、やりがいや誇りがあったとしてもあんまりな職場です。保険も補償もない中挑んでいたシーンを、深く考えずに観ていて「ごめんなさい」、楽しませてもらって「ありがとう」という気分でした。
ひところの隆盛はすっかりなくなったカンフー映画ですが、アクションシーンが不要になったわけではありません。CGの技術が発達したおかげで危険なシーンは回避できても、元の動きは人間のものです。これまでの積み重ねがあってこその「今」だということがよくわかるドキュメンタリーです。懐かしい作品の名シーンやその秘話、背景の香港の街並みが観られるのも嬉しいです。願わくはスタントマンたちが安全であること、苦労や努力に見合う報酬が得られますように。香港電影迷必見!(白)
香港映画好きだけどカンフー映画はあまり観ていない。香港映画を初めて観たのは、1990年日本公開の『風の輝く朝に』(1984)。その後香港映画にはまったけど、主に観ていたのは香港ニューウェーヴ系が多かった。アクション系の香港映画を初めてみたのは『ポリス・ストーリー3』(1992)。それまでジャッキー・チェンの映画も観たことがなかった。しかし、ジャッキーやサモハン、ユンピョウの名前は知っていた。観ていなくても知っていたくらいだから、けっこう巷や、映画雑誌に名前が載っていたのを見ていたのでしょう。『ポリス・ストーリー3』でびっくりしたのは、ミシェール・キング(ミシェール・ヨー)がバイクで列車に飛び移るシーン。これに驚き、この女優さんすごい!と思ったのがきっかけで、香港のアクション映画にも興味を持つようになった。
その後、カンフー映画も観るようになったけど、1990年以前のものはあまり観ていない。そんな私が観てもこの映画はすごい!! 映画のアクションシーンに命をかけたスタントマンたちの、心意気、姿、そのシーンの数々を観ることができる。CG全盛になった今日でも、元の形は彼らの演じたものから来ていると思う。そしてこのアクションシーンの華麗さは、京劇の動きからきていたというのを改めて思った。『七人楽隊』での京劇学校での訓練シーンを思いだし、こういう訓練の結果がスタントマンたちの原点にあるのだろうと思った(暁)。
2021年/香港・中国/広東語・北京語/92分/ビスタ/5.1ch
日本語字幕:城誠子
字幕監修:谷垣健治
特別協力:ジャパン・アクション・ギルド
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:https://kungfu-stuntman.com/
★2023年1月6日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開.
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